96.名残 ページ45
そう言って普通に窓から飛び降りてった七海さんの後を追って、階段を転がるように降っていく。
昇降口まで着いたとき、黒いニット帽の後ろ姿が見えた。
「猪野先輩！！」
「住吉！無事か！？」
「俺は大丈夫だけど七海さんは呪霊と交戦中！！行きましょう！」
土埃の舞う園庭の中を進むと、千手観音のような見た目の呪霊の腕がこの数十秒の間で三本切り落とされていた。
「イタｨ！！イｨ井伊iたtt|3あｧあイイ！！！」
血飛沫を上げながら叫び出す呪霊。
こちらが優勢に見えるがそれでも数十…いや、下手をしたら百を超える手が生えたままだ。
「イタｨ痛い！！！オカｧサン！！おか母母さん！！！イタｨ！！！ごめんなさい！！！ゴェンなサイ！！！」
七海さんに腕を切られた呪霊は錯乱して、こっちに襲いかかってきたが、すかさず猪野先輩の獬豸がその中心を貫いた。
「七海さん！猪野先輩！！戦いながらで構わないので聞いてください！！」
俺も飛んでくる手を銃でいなしながら土埃の中叫ぶ。
「この呪霊は原大和の過呪怨霊ではないです！！
恐らくもともとは通常の呪霊だったものが、この園の卒園生、在校生連日の原大和のニュースの報道で原大和という特定の形への恐れによって仮想怨霊化が進行してます！！」
「なるほど、
そう言いながら七海さんが五本六本と腕を切り落とすが、
一番最初に切り落とした腕はもう生え始めている。
俺はすかさず銃を向ける。
すると呪霊は腕ではなく首を伸ばし、グリン、と顔を俺の眼前に近づけた。
ぼこぼこと、こぶのように生えた顔。
その中の一つがぼろぼろと涙をこぼし始めた。
「置いテてかナイで…お母さん…！」
「…っ！」
その顔に、声に、昔の自分が重なった。
十二年前の、暑い部屋、ゴミと虫の死骸の匂いと自身の体臭、聞こえないはずの蝉の鳴き声が五感を支配した瞬間、
身体が横に大きく弾き飛ばされた。
「ぼさっとすんな！！死にてぇのか！！！」
猪野先輩に蹴られたこと、大きく開いた呪霊の口が自分の頭部を飲み込みかけていたこと、
そして、引き金を引く指を止めていた自分に猪野先輩に怒鳴られるまで気づかなかった。
「すんません…！」
目眩に似た症状を覚えたまま、すぐに復帰して発砲する。
十二年前の夏の名残は、まだ身体に染み付いていた。
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花梨 - とても面白いですね！ 更新、大変だと思いますが自分のペースで頑張ってくださいね! 私も呪術廻戦の作品を書いてますが良かったら作品の題名を教えますか？ (2022年6月6日 16時) (
レス) id: 8e5a2f605a (このIDを非表示/違反報告)
田田田(プロフ) - 雪月花さん» いつもありがとうございます。雪月花さんのコメントが届くたびに書こうという気持ちが湧きます。更新頑張ります。 (2022年2月3日 3時) (レス) id: 225ebf53bb (このIDを非表示/違反報告)
雪月花 - 田田田さん» 大好きな作品なので更新されてるととても嬉しいです！作者さんのペースでいいので更新頑張ってください！！いつまでも待ってます！住吉くんの手榴弾………威力はいかに……。 (2022年1月30日 23時) (レス) @page46 id: dcac8e28b5 (このIDを非表示/違反報告)
田田田(プロフ) - 雪月花さん» 雪月花さん、いつも更新のたびにコメントを残してくださりありがとうございます。遅い更新なのに根気強く応援してくださってとても励みになっております。これからもどうぞよろしくお願いします。 (2022年1月23日 14時) (レス) id: 225ebf53bb (このIDを非表示/違反報告)
雪月花 - 面白いです！！続き待ってます！！七海さん！！マジナイス！住吉くんガンバレー！ (2022年1月19日 1時) (レス) @page44 id: dcac8e28b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：田田田 | 作成日時：2021年1月6日 20時
