81.後輩 ページ30
その初任務以後も、俺との任務はちゃんとやっていたし飯の誘いにも奢りの時のみ応じてくれていたが、向こうから話しかけてくることなんて滅多になかった。
あまりの塩対応っぷりに好かれてはないんだろうなと思っていたが、どうやらそうでもなかったらしい。
聞けば、俺以外の先輩や同級生に話す言葉は、はいか、いいえか、罵詈雑言。
高圧的な態度で、女子には怖がられ、男子には疎まれ、悪い噂は収まるどころかむしろ増えていく一方だった。
どうしてそんな嫌われるような態度ばかり取るのか。
以前任務の帰りに聞いたとき、住吉はコンビニで買ったパックジュースにストローを挿しながら「決まってるじゃないですか」と口を開いた。
「呪術師が嫌いなんです」
「…それだけか?」
住吉はけろりとした顔で「そうですよ」と言ってのけた。
「キモいんすよね、呪術師って。
呪力とか術式とか普通に生きてたら必要のないものがこの世の全部みたく縋っちゃって」
「…一応俺も呪術師なんだけどなぁ」
「猪野先輩は他の奴らよりマシ。
呪術師じゃなければもっと素敵になれますよ。
辞める予定とかないっすか?」
「ねーーよ。ここに骨を埋める覚悟だわ」
「へー、かぁっくいー。俺には一生無理っすわ」
「あとはそうですねー」と、住吉はジュースを一口飲んで、口を離した。
「帰りにラーメンとか普通の高校生っぽくて、ちょっとよかったんで。特別扱いってところです」
───そんな住吉が、まさか教室で同級生とウノで遊んでいるなんて誰が思っただろう。
はぐはぐと隣でラーメンに乗ったチャーシューを食べる住吉を慈愛を込めた目で眺めると、視線に気づいた住吉は咀嚼していたチャーシューを飲み込んで、鬱陶しそうな顔を浮かべた。
「なんすか、キモい顔して」
「キモくはねぇだろ。誰の奢りだと思ってんだ」
「いつもありがとうございまーす。
それにしてもここのラーメン美味いですね」
住吉がはぐらかすようにラーメンの感想を述べて、スープを啜る。
軽口とはいえ、感謝の言葉を口にされたのは地味に初めてかもしれない。
思わず口元が緩み、その背中を思い切り叩けば住吉は咽せて咳き込んだ。
「よかったなぁ、住吉。特別が増えて」
慌てて水を飲み干した住吉は「えぇ?」と口を手の甲で拭いながら怪訝な顔を浮かべた。
「ゲホッ…さすがにラーメンひとつで大袈裟ですよ。美味いですけど」
921人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花梨 - とても面白いですね! 更新、大変だと思いますが自分のペースで頑張ってくださいね! 私も呪術廻戦の作品を書いてますが良かったら作品の題名を教えますか? (2022年6月6日 16時) (レス) id: 8e5a2f605a (このIDを非表示/違反報告)
田田田(プロフ) - 雪月花さん» いつもありがとうございます。雪月花さんのコメントが届くたびに書こうという気持ちが湧きます。更新頑張ります。 (2022年2月3日 3時) (レス) id: 225ebf53bb (このIDを非表示/違反報告)
雪月花 - 田田田さん» 大好きな作品なので更新されてるととても嬉しいです!作者さんのペースでいいので更新頑張ってください!!いつまでも待ってます!住吉くんの手榴弾………威力はいかに……。 (2022年1月30日 23時) (レス) @page46 id: dcac8e28b5 (このIDを非表示/違反報告)
田田田(プロフ) - 雪月花さん» 雪月花さん、いつも更新のたびにコメントを残してくださりありがとうございます。遅い更新なのに根気強く応援してくださってとても励みになっております。これからもどうぞよろしくお願いします。 (2022年1月23日 14時) (レス) id: 225ebf53bb (このIDを非表示/違反報告)
雪月花 - 面白いです!!続き待ってます!!七海さん!!マジナイス!住吉くんガンバレー! (2022年1月19日 1時) (レス) @page44 id: dcac8e28b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:田田田 | 作成日時:2021年1月6日 20時