73.夜風 ページ23
また再びベンチに戻って、腰を下ろす。
「ほんと、意味わかんない」
「ん？」
何度か脚を組み替えていると、今度は真依が口を開いた。
「なんでアンタが、謝んのよ」
「馬鹿じゃないの」と悪態を吐く真依に、
「あー」と気の抜けた返事を返す。
「いや、なんかオマエちょっと勘違いしてるみたいだったから悪いと思って」
「…何よ、勘違いって」
あ、やっぱコイツ、顔は真希とそっくりだわ。
膝に乗せた腕で頬杖をつきながら真依を見上げる。
視界に映る眉間に皺の寄った顔が思いの外そっくりで、
コイツらはちゃんと家族なんだなって、ぼんやりとそんなことを考えた。
「…強い術式持ってるアンタにはわからない、ってオマエ言ってたよな」
前髪が夜風に靡く。
九月半ばの風は、夏の残暑と冬の気配がないまぜになって、半端にぬるくて気持ち悪い。
「オマエの言う通り、俺は確かに術式を持ってる。
結構強いの。けど、俺自身はそれを使いこなせない。
それがわかったのが、大体、恵が相伝を持ってるってわかったちょっと前だった」
頬杖をついた手で、顔を隠しながら俯いた。
「俺は、オマエが思ってるより出来損ないだよ。
家の連中も、それまで散々よいしょしてたくせ、俺が使えないってわかった瞬間そっこー手のひら返したし。上の兄妹は、元々俺のこと嫌ってたし。
…だからってわけじゃないけどさ、交流会のオマエら見たとき、やっぱ、家族っていいなとか思ったわけよ。
俺は、あの家ではそんな風にはなれなかったから」
両手の指を組み、親指をもたつかせる。
今夜が、あと少し寒ければ少しはこの口も引き締まっていたかもしれないのに、ぽろぽろと余計なことをこぼしてしまった。
「まあ、俺の話なんかどうでもよくて。
なんていうか……オマエは俺のことなんか気にしなくていいよってこと。
術式も持ってねぇし、オマエら姉妹の間に割って入る気もねぇ。そもそも、できるわけがねぇんだわ」
「わかったか馬鹿」と念押しすれば
どうせギャンギャン喚かれるものと思っていたのに気味が悪いほど静かで、俺は思わず真依の顔を覗き込んだ。
「どういう感情でそのブス顔になってんだよ」
「う、るっさい、わ…ね！」
顔を拭いながら真依がやけくそ気味にぶん投げたペットボトルが、スコン、と綺麗にゴミ箱に入る。
それを見て俺は、姉妹で同じ色の、でも真希より癖毛気味な髪の毛を雑に掻き混ぜた。
「はは、ナイスピッチ。すげぇよ、オマエ」
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花梨 - とても面白いですね！ 更新、大変だと思いますが自分のペースで頑張ってくださいね! 私も呪術廻戦の作品を書いてますが良かったら作品の題名を教えますか？ (2022年6月6日 16時) (
レス) id: 8e5a2f605a (このIDを非表示/違反報告)
田田田(プロフ) - 雪月花さん» いつもありがとうございます。雪月花さんのコメントが届くたびに書こうという気持ちが湧きます。更新頑張ります。 (2022年2月3日 3時) (レス) id: 225ebf53bb (このIDを非表示/違反報告)
雪月花 - 田田田さん» 大好きな作品なので更新されてるととても嬉しいです！作者さんのペースでいいので更新頑張ってください！！いつまでも待ってます！住吉くんの手榴弾………威力はいかに……。 (2022年1月30日 23時) (レス) @page46 id: dcac8e28b5 (このIDを非表示/違反報告)
田田田(プロフ) - 雪月花さん» 雪月花さん、いつも更新のたびにコメントを残してくださりありがとうございます。遅い更新なのに根気強く応援してくださってとても励みになっております。これからもどうぞよろしくお願いします。 (2022年1月23日 14時) (レス) id: 225ebf53bb (このIDを非表示/違反報告)
雪月花 - 面白いです！！続き待ってます！！七海さん！！マジナイス！住吉くんガンバレー！ (2022年1月19日 1時) (レス) @page44 id: dcac8e28b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：田田田 | 作成日時：2021年1月6日 20時
