61.凄惨 ページ11
殴って砕いては、また下から新しい木が姿を現しまた砕く。それをどのくらい繰り返しただろうか。
ただでさえメカ丸戦で酷使したゴリラ核は、お姉ちゃんと同じくらいもうヘロヘロだ。
何重にも重なり合った樹木の檻は10本分くらい砕いてようやく、向こうの景色が見えるか見えないか程度の隙間を作ることができた。
こんな頑丈に作るなんて随分と用心深いこった。
「ふんぬっ!」
隙間に両手を差し込み、左右にミシミシと開いていく。
顔一個分くらいまで開いて、ようやく中の空間が見られるかと思ったら、そこから漏れた謎の黒い霧がブワッと俺の顔に吹きかかった。
「ゲホッゲホッ…って俺呪骸だから関係ないんだったわ」
隙間から中の様子を覗き見るが、
その霧のせいで視界は真っ黒で、Aの姿を目視で確認することはできなかった。
…Aの呪力はまだしっかりと感じる。
これだったら中を探した方が早いな。
ミシミシとさらに力を込めて開くと、バキッという音を立てて、パンダ一匹通れる程度の穴ができた。
「A!無事か!?」
外へ外へと流れていく霧に逆らいながら、Aの呪力反応が強い方へと向かう。
なんだか妙な気配がする呪力だったが、Aのものであることには違いあるまい。
そう思って、黒い霧で覆われた視界の中、
手探りでAの身体にペタリと掌が触れたのだが、すぐにそれを引っ込めた。
これは、人間の皮膚じゃない。
硬い、甲羅のような感触。
外へと逃げ出した霧の濃度は徐々に薄くなっていき、
晴れていく視界は、その正体を詳らかにしていった。
妙な気配のする、Aの呪力。
それを発していたのはAではなく、何重もの木に縛られながら暴れる、真っ黒で巨大な蠍だった。
俺がずっと辿っていたのは、まさかコイツの呪力…?
それなら、Aは…
「!、Aッ!!」
蠍の後ろの上空。
腕を貫かれ、宙ぶらりんになったAの姿がそこにあった。
急いでその真下に駆け寄り
Aの腕を貫いていた木の真ん中辺りを拳で粉砕する。
核をパンダに切り替え、
貫かれた木ごと落ちてくるAを抱きとめた俺は、その姿を見た瞬間目を疑った。
肉が引きちぎれた腕に、
深く深く抉り抜かれたように穴の空いた腹。
沸騰した湯のように傷口が泡立ちながら爛れる光景は、あまりにも惨かった。
とにかく、すぐに避難しなければ。
Aを抱えながら一歩踏み出した脚は、
コツン、と何か硬いものにぶつかった。
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花梨 - とても面白いですね! 更新、大変だと思いますが自分のペースで頑張ってくださいね! 私も呪術廻戦の作品を書いてますが良かったら作品の題名を教えますか? (2022年6月6日 16時) (レス) id: 8e5a2f605a (このIDを非表示/違反報告)
田田田(プロフ) - 雪月花さん» いつもありがとうございます。雪月花さんのコメントが届くたびに書こうという気持ちが湧きます。更新頑張ります。 (2022年2月3日 3時) (レス) id: 225ebf53bb (このIDを非表示/違反報告)
雪月花 - 田田田さん» 大好きな作品なので更新されてるととても嬉しいです!作者さんのペースでいいので更新頑張ってください!!いつまでも待ってます!住吉くんの手榴弾………威力はいかに……。 (2022年1月30日 23時) (レス) @page46 id: dcac8e28b5 (このIDを非表示/違反報告)
田田田(プロフ) - 雪月花さん» 雪月花さん、いつも更新のたびにコメントを残してくださりありがとうございます。遅い更新なのに根気強く応援してくださってとても励みになっております。これからもどうぞよろしくお願いします。 (2022年1月23日 14時) (レス) id: 225ebf53bb (このIDを非表示/違反報告)
雪月花 - 面白いです!!続き待ってます!!七海さん!!マジナイス!住吉くんガンバレー! (2022年1月19日 1時) (レス) @page44 id: dcac8e28b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:田田田 | 作成日時:2021年1月6日 20時