手紙 ページ22
何も言えないまま夜を越えて、Aが病室に運び込まれた。
もう、息をしてないのに、
なんで君は最期まで綺麗なんだ?
そして机に見つけたのは、一通の手紙。
『西川遥輝くんへ』
Aの丁寧な文字で書かれた封筒の宛名。
紛れもなく俺への物やった。
それを読んで、涙が止まらなかった。
次の日のこと。
泣き腫らして赤い目で日本シリーズ最終戦に向かい。
「寝不足」とか「泣いた?」とか茶化されたけど、知らん。
ベンチには、いつしかAに貰ったピンクのクマを置いた。
「俺、日本一決めるから。────上から、見てて」
でも上手くいく訳もなくて、3-0でファイターズが負けたまま9回ウラ。
札幌ドームはちょっと沈んでいた。
すると、俺の前の卓さんまでの3人がヒットとフォアボールで繋いで、
まさかのツーアウト満塁。
出来すぎだとは思ってた。
きっと、満塁で回ってきたのが俺なのも、
そもそも満塁になったのも、
今までファイターズが負けてたのも、
たまたま甘い速球が来たのも、
このためだと思う。
A。
感触は最高。
入った。
それだけ、いったと思った。
(西川遥輝が決めました!!9回ウラ、逆転満塁ホームラン!!!)
放送席ではきっとそう言ってる。
ダイヤモンドを回ってる時も、
みんなに叩かれてる時も、
水を掛けられた時も、
ずっとぼーっとしてた。
「なぁ、A見てるか?俺、打ったで」
上を向いて────生憎ドームだから空は見えないけど。
それと、もう1つ。
「俺も、お前のこと、好きや」
もう届かない気持ち。
溢れた涙。
チームメイトの前で、泣くことなんてなかったのに。
俺は、ずっとAのことを忘れない。
俺の人生に色をくれた。
楽しみをくれた。
俺も、お前のことが大好きやで。
今までありがとう。
────さようなら。
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haruki07 - とてもいいお話ですね。心理描写が綺麗です。更新頑張ってください! (2018年7月5日 16時) (レス) id: 8c35a745f8 (このIDを非表示/違反報告)
みこと(プロフ) - 感動的な導入文に惹かれました。これからのお話の更新も楽しみにしています。 (2018年7月5日 15時) (レス) id: c78cf8c693 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆゆ | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/yuyu_10
作成日時:2018年7月5日 10時