終わって ページ21
「……A?」
「あ、西川くん?」
試合、結局ファイターズは2-0で負け。
最終戦は明日へ持ち越された。
速攻でAがいる筈の手術室に向かって、でもそこにあったのは、
未だ点滅を続けている『手術中』のランプと、
涙を流し祈っているお父さんお母さんの姿やった。
「Aね、まだ手術終わんなくて……」
「もう、何年も経ったみたいや」
お父さんも、声が震えていて。
俺もそっと椅子に座って、Aの無事を願っていた。
どうか、目を覚まして。
もう一度、俺に向けて笑顔を見せて────……
ほんまに、何年も、何十年も過ぎたみたいやった。
ようやくランプが消えて、
出てきたのはお医者さん。
もう、分かっていた。
表情が暗いのも、
Aを運んでこないことも。
「残念ながら、」
その言葉に続くものも。
「手術は────────」
お母さんとお父さんの泣き声と、
受けたショックの大きさで。
それ以上は聞こえなかったけど。
「A、」
もう一度。もう一度でいい。それだけでいい。
まだ、さよならも言ってない。
「なんで、まだお別れなんてしたくない」
本当に悲しい時は、
涙も声も出ないなんて。
知りたく、なかった。
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haruki07 - とてもいいお話ですね。心理描写が綺麗です。更新頑張ってください! (2018年7月5日 16時) (レス) id: 8c35a745f8 (このIDを非表示/違反報告)
みこと(プロフ) - 感動的な導入文に惹かれました。これからのお話の更新も楽しみにしています。 (2018年7月5日 15時) (レス) id: c78cf8c693 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆゆ | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/yuyu_10
作成日時:2018年7月5日 10時