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「おじゃまします・・・？」
玄関に上がってしまえば、むしろ開き直れる・・・気がする。言い聞かせておこう。
おじいちゃんが、玄関から見て左のドアを開けると、むうんとした筆洗油のにおいがした。油絵を描くときの独特のにおいは私は嫌いじゃない。
ドアが開かれて、真っ先に目についたのは、コンクリート打ちっぱなしの壁や床にぶちまけられたカラフルなペンキ。作為的におしゃれとして塗ったというより、「制作活動してたらこぼしちゃった、テヘペロ」みたいなアンバランスさだ。これ借りマンションじゃないの？いいのかな、ここまで汚しちゃって。
おじいちゃんは室内に入っていき、それに続いて私も足を伸ばす。
・・・いた。
西園寺だ。私たちに背を向ける形で、イーゼルに立てたキャンバスに色を重ねている。
うす灰色の力強い輪郭線は、ひざまづく半漁人らしきものを形作っていた。頭は緑がかった青い魚。特徴的な尖った顎からして、ナポレオンフィッシュもどきだろうか。その下に体格の良い裸体像が続く。雄雄しい外見なのに、しなだれかかるようなポーズは繊細な女性らしかった。
その半漁人が、８０号の大きいキャンバスの中央に居座っていた。
下地の色は青のようだ。どことなくセンチメンタルな暗い色合いは、普段の西園寺からは想像できない。
「この画家はね、絵を描くときに全く下書きをしないんだよ」
静かな口調でおじいちゃんは続ける。
「「独創性」、芸術を志す人はほぼ皆突き当たる壁だ。先人たちによって技法は出尽くされ、何をやっても二番煎じになる。では、どうやって自分らしさを表現するのか？見た人の知識なんて軽く飛び越えて、これは何なんだといかに思わせ、惹きつけるのか？」
確かに。
伸び伸びと、握った絵筆を躍動させる後姿は。
「天才・・・」
私にはそれが、この人の為に用意された言葉のように思えた。
そしてはっきりと悟った。
この人は私の手の届かない、高みにいるんだ。・・・私とは違う人種だったんだ。
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茂木サカナ - そうですね。学園ハンサムは占ツクではまだまだマイナーなので、これから西園寺さんたちの活躍する話がどんどん増えてほしいです！ (2018年5月18日 20時) (
レス) id: 10d180f801 (このIDを非表示/違反報告)
ハニトン！（別垢）(プロフ) - これからもハンサムな小説が増え続けるといいですね！ (2018年4月21日 11時) (レス) id: baf5146a2f (このIDを非表示/違反報告)
茂木サカナ - 有難うございます。励ましの言葉大変恐縮です。頑張ります (2018年2月28日 18時) (レス) id: 609f4ec12b (このIDを非表示/違反報告)
夏川なずな - コメント失礼します！とても面白いです！更新楽しみにしてます！頑張って (2018年2月27日 15時) (レス) id: ceafb5d2c9 (このIDを非表示/違反報告)
茂木サカナ - 有難うございます。ご期待に沿えられるよう、ぼちぼち頑張りますので、気長にお付き合いくださいませ。 (2018年2月9日 19時) (レス) id: 6917fa2426 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茂木サカナ | 作成日時：2018年1月1日 23時
