間一髪 ページ19
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如何しようもなく居心地が悪い喫茶処
絶品な筈のナポリタンも最早味がしない
いつ背後のドストエフスキーであろう男がこちらに気付いてしまうのか、気が気でないのだ
「あー、美味しかった」
と、紅茶を啜る太宰さんは私とは正反対で、大変満足気である
『だ、だだ太宰さん、そろそろ社に行きましょう』
「そうだねえ、国木田君も血眼になって私の事を探しているだろうし、そろそろ戻ってあげようか」
『け、賢明な判断ですね!さあ行きましょう!』
卓上の伝票を握って素早く立ち上がった私を無言で見上げる太宰さん、そんな腐ったキャベツを見る様な目をしないでほしい、一杯一杯なんだ
「何をそんなに慌てているのかな?」
『べ、別に慌ててなんか___ 』
「ああ、若しかして君が今会いたくない人物でも居るのかい?――この店内に」
『そっ……』
――その通りだ
私が判り易過ぎるのか、或いは太宰さんお得意の読心術か
どちらにしても拙い事を勘付かれてしまった
今、ばれてはいけない
太宰さんはきっとドストエフスキーに、探偵社の人間だと面が割れているだろう
そんな太宰さんと一緒に居るのを見られれば、私の計画が、命が…
―――その時、背後の人物が立ち上がる気配
彼がこの儘店を出ようものなら、既に席を立ってテーブルの前に居る私の横顔が丸見えである
嗚呼、終わった……
___コツッ
立ち上がり一歩踏み出した靴音に厭に鼓膜を揺らされ、諦めの溜め息と共に下を向いた
――と、同時に視界が暗転
嗅ぎ慣れた匂いが鼻腔一杯に広がった
______コツ、コツ…
恐れていた靴音が通り過ぎる
カランカランと、店の扉が開いて、そして閉まる音が訊こえた所で漸く声が出た
『だ、太宰、さん…?』
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(余談ですが、最近ドストさんのフルネームがゲシュタルト崩壊してきました…もし訳の判らない誤字り方をしていたら、コメントにてそっとご指摘下さい……)
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世河経(プロフ) - 孫うこと無き神作を見つけた (2022年3月23日 11時) (レス) @page4 id: 41bf3298cb (このIDを非表示/違反報告)
野良神(プロフ) - すみません、26ページなんですけど、ドスエフスキーになっていましたよ? (2018年12月21日 14時) (レス) id: d6c3f54fc0 (このIDを非表示/違反報告)
狐の涙(プロフ) - フョードルさん、いいですね。生命の輝き!! (2018年10月13日 21時) (レス) id: e918fb1bd4 (このIDを非表示/違反報告)
ハニー - ドストさんすき…あゝでも生命の輝きもすき…もッと云うなら骸砦組だいすき。 (2018年10月5日 11時) (レス) id: f040ea1a18 (このIDを非表示/違反報告)
彦星(プロフ) - 今更コメントすみません、失礼します。最高でした(;_;) ドス君、、、最高の作品をありがとうございました!応援してます! (2018年7月4日 17時) (レス) id: 3e6db4893b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お餅 | 作成日時:2018年4月14日 15時