可愛い系の最恐六年生 弐

お優しいお方の段 ページ5

緑龍side
『お兄さん。お兄さんはとっても優しい忍びになれるね』




戦孤児だった俺に声をかけてくれた一人の少年。

そして一人の少年に言われた言葉だ。

？？「お前に何が分かる！戦で親を、家族を、友達を失ったんだ！お前なんかに何が分かる！」

その時の俺はまだやんちゃで、無理ばかりする正真正銘の馬鹿だった。

「でも、帰る所ないんでしょ？」

その子供の言葉にムカついて近くに落ちていた刀を持ち子供に思いっきり振りかざした。

「そんな持ち方したら自分に刺さっちゃうよ？」

刀を軽々と避け後ろに回る子供。

「ならこうしよう、もしお兄さんが俺に負けたら俺を殺して良いよ。けど、俺が勝ったらお兄さん伊賀に来てね」

？？「お前みたいな餓鬼に負けるわけがねぇよ！」








「お兄さん弱すぎ」

数分もしない間に俺は子供に押さえ付けられた。

「約束通り一緒に行こう？」

子供に手を引かれていたが俺はそのうちに意識を手放した。






？？「………ん」

目を覚ますと俺は花に囲まれていた。

「あれ、起きたの？」

子供が顔を覗かせた。

？？「………葬儀でもしてくれんのか？」

「違うよ、薬草だよ。綺麗でしょ？」

そう言うと子供は俺の頭を膝に乗せた。

？？「…………お前何してる」

『お前じゃない、A。お兄さんの名前は？』

そう聞かれて答えようとするが思い出せ無かった。

『多分脳が忘れさせちゃったんだね』

そう言うとAと名乗った子供は俺の頭を撫でた。

やめろ、そう言いたかったが体が動かずどうすることも出来なかった。

『なら俺がお兄さんに名前付けてあげる』

Aがそう言うと遠くから、

？？「やめとけ〜、お前名前付ける才能ねぇから」

『うるさいなぁ！糞ジジイ！』

等と口喧嘩を始めた。

頭の上ではやめてくれ、そう思いながらAが付けてくれる名前を待った。

『うぅん、そうだなぁ……………』

Aは数分考え込んだ後こう言った。

『緑龍ってのはどう？南蛮人達が言っていたんだ、とても美しいんだって。お兄さんにピッタリだね』

どうだ？、と言わんばかりの瞳が俺を見る。

緑龍「緑……龍」

嫌なら別のを考えるからね、そう言ってAは消えてしまった。

お優しいお方なんだなぁ、そう思いながら俺はまた眠りについた。

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