ひゃくに。 ページ6
完全に日が落ち、少しだけ暗くなってきた外を見る
…こうして、何をするわけでもなく、ただ廊下の窓から花々が咲き乱れている中庭を見る。なんて数日前の俺は想像もしていなかった
今、この瞬間だけ切り取れば平和なんだけどな…こんな時間がいつまでも続けばいいのに。
あぁ…なんかもう疲れたな。誰か俺を…
「Aさん？どうしてこんなところに居るんですか？！まだ病み上がりじゃ…」
『エミさん…』
後ろから話しかけられ、その気配に気づかなかった事に驚いていると、ふとエミさんの持っている本が重そうだと気づき、半分ほど奪い取って歩き出す
「…ありがとうございます。やっぱり優しいな、Aさんは」
そう呟き少しだけ笑みを溢すエミさんは、どこかホッとしたようだった
恐らく俺が暴走したことを聞いていたのだろう。まあ、幹部に限らずこの軍にいる奴は全員伝え聞いているだろうな
そこから5分ほど歩いて城の一角にある図書室へとやってきた
「ふー、助かりました！机の上に置いといてください。あとでまた整理してから片付けるので」
『わかった』
ドサ、と本を置いて一息ついたところで、エミさんが言った
「よかったら話聞きますよ。何か悩み事、ありますよね」
『…いや、エミさんに話すほどの事じゃ…』
「私じゃ役不足ですか？」
『っ！そんなことはない…けど…』
「じゃあ話していただけますよね？」
…相変わらず、俺の扱い方を心得ているな。…エミさんになら、話しても…いいか
『…誰にも言わないと約束してくれるなら。』
「ええ。言いませんよ」
エミさんの優しくもまっすぐな目に根負けし、深いため息をつき、椅子に腰かけ話し始める
『これが自分本位な悩みだとは分かっているんだが、その…許せないんだ』
「ふむ。誰を？」
『自分。大事な時になんにも出来ない無力な自分が。この前だってそうだ。助けようとしている人を傷つけるなんてもはや論外だ』
「でも…これまであなたは私たちのことを何度も助けてくれたじゃないですか？」
『…いいや。助けられた数より…。この話はいいか。まあとにかく、ショッピは許しても、俺が自分のことを許せないんだ』
みんな俺に優しい。優しすぎる。そんな皆を見ていると…苦しいんだ。まるで水中で息をしようとしているみたいに
「なるほど…つまりAさんは、そのショッピ君を傷つけてしまったという罪悪感から、まだ立ち直れていないんですね」
『…そうだな』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 493人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
U - rpが来て主さんがwrwrdに再熱...というかこの界隈を思い出してくれたらなぁっと思い帰ってきました。もうこの作品も2年経ちますね、気が向いたら続編を書いてくれたら幸いです (4月8日 16時) (
レス) id: 2a32fc0009 (このIDを非表示/違反報告)
海老天2(プロフ) - 久しぶりですね、wrwrdに再燃したのでまた何周も見させていただいてます。もう何周見たのでしょうか…数え切れません。完結してしまったんだなと思うと少し辛いですが、この作品が残っているだけで私は嬉しいです。どうか作品を書いている主様が元気でありますように (12月20日 0時) (レス) id: 33cb616463 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - まじ好きです。ぜひ更新していただきたい。 (12月9日 10時) (レス) @page50 id: c8a05a8ee5 (このIDを非表示/違反報告)
アジフライ - もう20周目は行ったのではないでしょうか…もう界隈から離れてしまったのかもしれませんが、作品を消さないでくれてありがとうございます。いつかまた、気が向いた時にでも更新していただきたいです…私がこの界隈を離れても、この作品は読み続けると思いますので… (10月31日 12時) (レス) @page50 id: 0a174f529f (このIDを非表示/違反報告)
U - 停止してからも読まれ続けているのも珍しいですよね。各有私もそのひとりなのですが....作者様の心身ともに健康を祈ってます。今7週目ﾃﾞｽ((ﾎﾞｿｯ… (10月30日 22時) (レス) id: 3d178da5c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：山田。 | 作成日時：2022年7月26日 3時
