☆最終話☆その先へ ページ18
「「昨日の午後4時頃、○○市の―――…」」
トーストの芳ばしい香りが漂う暗い室内で
悲惨なニュースを垂れ流すTVを眺めながら、真新しいカッターシャツを羽織る。
あれから時は流れ、私達は高校生になった。
髪もすっかり伸び、傷跡は殆ど目立たなくなった。
カーテンの僅かな隙間から漏れる朝日に、空中の塵がきらきらと反射している。
「「それでは次のトピックスです」」
『…!!』
話題の変わったTVに駆け寄り、音量を上げた。
カッターシャツ以外は下着だけど、構わず薄い箱の中の人物に釘付けになる。
「「今話題沸騰中のタレント、
高橋 雫 さんに密着です!!」」
箱の中の女の子は、紛れもない彼女。
髪は黒のショートになり、少し痩せた。
あの時も思っていたけれど、彼女の演技力は並じゃない。
女優としての才能があったのかも。
…こんな未来、誰が予想してたいただろう。
なんて考えていると、
「おはよ〜A。
ゲッ高橋じゃん!!」
後ろからブンちゃんが、肩に腕を回してきた。
『おはようブンちゃん。
映画に出るんだって。すごいよね^^』
と言うと、
「ふーん…でも俺、やっぱこいつ嫌い」
と、眠そうに欠伸をしながら答えた。
ブンちゃんは年をとるごとに格好良くなっていく気がする。
…私も頑張らなくちゃ。
『ってブンちゃん、遅刻しちゃう!!早く制服着て!!!』
「えー…俺、お前と居たいんだけど〜
つーかさ、その格好は誘ってんだろぃ?」
『もう/// ダメダメ、早く服着てっ!!』
そう言ってさっと制服を着ると、
「ちぇっ。へいへい」
と不満そうに言いながら洗面所へと歩いていった。
『…/////』
毎日こんなんじゃ、心臓が持たないよ///
微熱を帯びた溜め息をついて、朝食を準備した。
―――――――――――――――――――
「用意完了だぜぃ♪」
『うん!!じゃあ、行こうか^^』
制服をばっちり着こなしたブンちゃんと家を出る。
『行ってくるね、ミー』
ミー「「………」」
――最後に捕捉。
現在私の家には、小さいコアラがいる。
勿論、私にそっくり(らしい)のあのコアラだ。
《ミー》は、英語の《me(私)》からとった。
母親がオーストラリアの地で何をしたのかは不透明だけれど。
冷たい家に、一匹分の温もりが増えた。
ブンちゃんと顔を見合わせ、二人で笑う。
「『いってきまーす!!』」
ドアの向こうには、いつもと変わらぬ青空が広がっている。
END
ラッキーアイテム
革ベルト
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yn - めちゃくちゃ面白かったです( ´•̥ ̫ •̥` )最後のキスシーンは感動して泣きました! (2022年2月10日 2時) (レス) @page19 id: c85f91ed97 (このIDを非表示/違反報告)
栞 - 全部見た、6回位読んだ。何回も泣いて目が痛い。もっといろんな小説書いて欲しい。頑張ってください。 (2016年5月7日 19時) (レス) id: 7d989b00f5 (このIDを非表示/違反報告)
なぁみ@テニプリ(プロフ) - 全部拝見させていただきました。もう、小説でこんなに泣いたんは初めてです!素晴らしい作品ありがとうございます! (2015年6月28日 21時) (レス) id: 1b56b07512 (このIDを非表示/違反報告)
はにぃ(プロフ) - こんばんは!初めて拝見させていただきました!もう、3辺りから気づいたら泣いてました。小説とかでないたの初めてです。こんな素晴らしい作品をつくっていただき、ありがとうございました! (2014年4月11日 22時) (レス) id: 81c414bc0b (このIDを非表示/違反報告)
我の封印されし左腕が疼くww - コアラ! (2014年4月7日 17時) (レス) id: ce78beb37d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空豆 | 作成日時:2012年9月26日 17時