下らない話。 (ページ24)

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轟焦凍の不毛な話ページ24

轟→爆豪の彼氏主の不毛な話

轟サイド

『轟くん。』

恐る恐るといった風に俺の左目の火傷痕をなぞる白い指。海みたいな深い青の瞳に吸い込まれそうだった。
本当は臨時休業だった猛暑のある日、間違えて学校に来たのだ。奇遇にも水野も一緒だった。

『轟くんの髪って綺麗だね』
「お前に言われると嫌味に聞こえるな。」
『そんなことないよ。個性のせいでよく痛むから。』

そう言って俺の髪に白い指を通す。
爆豪くんは髪質が固いから新鮮だ、と憂いの帯びた声色だった。
じっくりと髪の本数でも数えたんじゃねえのかってくらい無言で俺の髪に好き勝手触る水野。
嫌じゃなかった。寧ろ嬉しかった。

「爆豪の髪は刺さるからな。」
『困ったもんだよ。』

苦笑い交じりに水野は言った。
俺の頭のてっぺんあたりの丁度赤と白の分け目あたりを軽く撫でて、ありがとう、と一言。
そのあとまた火傷痕を軽く指先でなぞった。

『痛い？』
「痛くは、ねえ。」
『…怖かった？』
「今は、怖くはねえ。」

そっか、と破顔する。ああ愛しい。
爆豪にもさっきのように触れるのだろうか。壊れ物を扱うみたいに綺麗な指で。

『分け目がどうなってるか気になったんだけど、不思議だね。』

俺の少し長めの部分の髪を耳にかける水野。
触れた耳が熱くなって、どうしようもなく堪らなかった。
なれるのならお前の隣に居たかった。
でもなんとなく無理な気がした。きっと多分、こいつと爆豪はこれからもずっと。そんな気がした。
そう思ったら本人を目の前にして泣きたくなった。

『あ、ごめん、傷のこと聞いたから、ごめん』
「あ、や、だいじょうぶ、」
『だって泣いてる。』

ああくそ。お前は誰にでもこんな風に優しく触れて甘やかすのか。頬に手を添えて親指で涙を拭われる。余計に出てきたから厄介だ。
その綺麗な手を掴むともう片方の手で頭を撫でられた。馬鹿。
ぽすんと顔を肩あたりに押し付けられて戸惑っていると無言で頭を撫でられる。

「…やめろ、制服濡れるぞ、」
『大丈夫。明日休みだから。』

お前のその海みたいな瞳の中に住んでいられたら。
俺だけをみてるこの瞬間だけ幸せだった。