下らない話。 (ページ16)

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蛇個性くんと梅雨ちゃんページ16

梅雨ちゃんサイド

たまたま購買で美味しいスイーツが新しく入ったって聞いたからお茶子ちゃん達と来てたの。
けど思った以上に人が、それはそれは多かったの。
峰田ちゃんほどではないけど比較的背の低い私は簡単に人の波に流された。どうして購買もこんなに広いの。(食べ物のバリエーションに文句はない)
すると誰かの足を踏んで挙句結構背の高いその子の制服のボタンに髪が引っかかってしまった。

「あっ、ごめんなさい、今、」

人に押さえ押されうまくボタンから髪が解けなかった。
もういい。ちょっともったいないけど引きちぎってしまおう。家に帰ったら切り揃えよう。と思って指先に力を込めた。

『引きちぎっちゃ駄目だよ、髪は女の子の命、でしょ？』

人の多い中、その子は頭半分くらい出てて相当身長が高いのだろう。
そっと力を込めていた指をボタンから外された。

『こっち来て』

髪が千切れてしまわないように私の肩を抱いて比較的人の少ない隅っこの方に移動した。
彼はごめんねと申し訳なさそうな顔をしながらボタンに絡まってしまった私の髪をなんとか解こうとするが、不器用なのか髪が絡まりすぎてるのか全く解けない。

『うわ、全然解けない、ごめん、ほんと、』

鼻の高い爬虫類顔を困ったようにして謝る彼は図体に似合わずなんだか可愛らしく見えた。

「やっぱり千切るわ、」
『あ。いいこと思いついた。』
「なに？いいことって、っちょ、なにしてるの！」

彼はぶちっと自らのボタンを千切ったのだ。
あああ、制服なのに…！！

『ほら、取れた！髪ちょっとぐちゃぐちゃになっちゃったけど…』

そう言って手の甲に鱗の目立つ大きな手で私の髪を撫でつける。

「でも、ボタンが、」
『んー、裁縫得意な女子に頼むよ。』

少し金色の黒目の大きなつり目気味の目を細めて笑う彼。

「わたしに直させてちょうだい。」
『え？あ、いいの？』
「ええ。これくらいするわ。髪の毛を切らずにすんだんだもの。」
『えーと、じゃあ、お願いします…あ、これお代に…』

そう言ってボタンとブレザーとなにか紙袋を渡される。
頭にはてなを浮かべていると、

『ほら、最近入った美味しいらしいってスイーツ、なんか申し訳なくて、』
「大丈夫よ貰わなくても、」
『やだ！貰ってください！』

さっきまでなにを考えてるかわからない子だと思ったら突然子供みたいに…。
申し訳なかったが、ありがたく頂くわ、と言うと嬉しそうに二股に割れた舌をちろりと出して笑った。