下らない話。 (ページ13)

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天喰環の彼氏の話。ページ13

天喰サイド

あの人はいつだって大人だ。

俺には到底理解できないコーヒーの美味しさを知っている。
一度だけ煙草を吸ってるのを見たことがある。
いつだって俺の我儘に折れてくれる。大人だ。
優しい。けどどこか子供扱い。
先生、俺にはどこが足りないですか。

「ま、まだ一緒に、いたい、」

押し殺しに押し殺した本音が出た。
服の裾をきつく握って本当に小さい声だったけど聞こえたみたいで少し動きを止めて少し吃驚したみたいな顔。
ああでも明日も学校だ。最近はテストも近いし卒業後の生徒の進路とか先生きっと忙しいんじゃ。
そう考えたら、そんな忙しい中わざわざ自分の為に時間を割いてくれてるのに、その上時間を奪うような我儘。
そう思ったら、なんだか。

『…環？』
「ぁ、俺、宿題終わってない、んで、スイマセン、やっぱ帰ります」

嫌われたくない。
え、とまた吃驚したような声。
けど止めようとしないのか、立ち上がった俺にソファに置いてあったブレザーを渡してくれた。
一瞬触れた指と指。それだけなのに心臓がとんでもないくらい跳ね上がって。
バレないうちに、はやく帰ろう。ブレザーに袖を通した。
寒いから、と俺に似合う色を選んでくれたマフラーをわざわざ巻いてくれて。このマフラーは先生の匂いがするから好きだ。

『暗いし、遅いけど大丈夫？送る？』
「…誰かに見られたりしたら、問題になるんじゃないですかね、」
『それもそうか、気を付けてね？』

頷いて玄関で靴を履いた。傍に用意していた鞄を肩にかけて立ち上がるとぎゅうと抱き締められた。
本当に気をつけるんだよ、と耳元で言われてくすぐったい。
気を付けます、と言ったつもりだけど若干声が震えた。
少し乱雑に頭を撫でられてまた少し抱き締められて。

「…お邪魔しました、」
『うん。宿題はちゃんと終わらせるんだよ。』

軽く頭を下げて玄関を締めた。

ああずるいなあ。なんだあれ。
どうしてあんなに、ずるい。帰り際にあんなの。
俺はいつになればあの人と同じくらいの大人になれるんだろうか。多分一生無理だ。

ため息をついてマフラーに顔を埋めた。

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拗れた話を、書きたい…ッッ！！！(切実)