邯鄲之夢【文豪とアルケミスト】

評価 ページ35

「たっだいま〜！」

陽気な声が聞こえて、振り向くとにこにこ笑った太宰先生がいた。潜書から帰ってきたようだ。その太宰先生の背中にぴったりくっつくようにしている京夜先生。顔を見れば疲れていることがすぐに分かる。

「⋯⋯なんで太宰はそんなに元気なの」

京夜先生の元気なさげな声。まるで太宰先生の対比。兄弟みたいな二人を微笑ましそうに見ている高村先生と、こちらも疲れた顔の徳田先生。どうやら誰も喪失することなく帰ってきたらしい。

「えっと⋯⋯京夜先生は補修が必要みたいですね」

初めての潜書だから当たり前と言えば当たり前だ。京夜先生は深くため息をつく。太宰先生に補修室への案内をお願いした。私は一緒に潜書してくれた残りの二人に話を聞く。

「京夜先生、どんな感じでした？」

高村先生と徳田先生は二人同時に「えっと」と口を開き、顔を見合わせる。高村先生がどうぞ、と促すと徳田先生は頷き、話始めた。

「初めてにしては良くやったほうじゃない？ 急所も攻撃できてたし」

急所攻撃か。鞭は全体攻撃が出来るが、急所への攻撃でないと、攻撃力はあまり高くない。急所の攻撃が出来れば便利な武器だが⋯⋯。

「でも⋯⋯なんて言うのかな。あの『世界』に見惚れてるって言うのかな⋯⋯？ 自分の世界に入っちゃったみたいで⋯⋯」

これは高村先生。島崎先生も、侵蝕者に取材をしようとしていたことがあるが、そのようなものだろうか。⋯⋯京夜先生らしいと言えば京夜先生らしい。

「それで攻撃されて、喪失しなければいいけどね。戦闘的には問題ないと思うよ」

情報をくれた二人にお礼を言い、私は補修室へ急いだ。

感謝→←戦闘

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