林檎 ページ25
「君かえす 朝の敷石さくさくと 雪よ林檎の 香のごとくふれ」
白秋さんは目を閉じて、そっと呟くようにして言った。短歌だ。不倫の歌、だったか。曖昧な記憶で申し訳ない。林檎の香のごとく。白秋さんらしいと言えば白秋さんらしい。
「⋯⋯林檎、お好きなんですか」
許可もなしに勝手に手を伸ばしたようなものだ。きっと好きなのだろう。愚問だったと聞いてから気付いた。それでも白秋さんは、嫌な顔一つせずに答えてくれる。優しい人だ。
「林檎は僕の大好物なのだよ。死ぬ前に食べた最後の食べ物も林檎だったねぇ」
「林檎が赤くなると医者が青くなる、って言うよね。林檎は体にいいのかい？」
光太郎さんだ。私も林檎は好きだが、体にいいのかは分からない。無学なもので、そもそもそんな言葉ですら知らない。諺だろうか。
「石狩の都の外の
君が家
林檎の花の散りてやあらむ
俺様だって林檎は嫌いじゃないぜ」
林檎の花は白い。白秋さんは、そんな林檎の花の白さと、雪の白さ。林檎を食べるときと、積もった雪を踏みしめるときのさくさくという音。二つを上手く対句させてあの三十一文字に閉じ込めるのだから素晴らしい。
「あ」
ついつい、林檎を口に運ぶ手が止まらなくなってしまう。もう、林檎は一つしか残っていなかった。これを食べるのはなんとも申し訳ない。他の先生方に譲ろう。
「君が食べたまえよ。僕はもうたくさん食べたからね」
「俺様も要らねぇ」
「風月くん、二人がそう言ってるんだから食べなよ。親切は貰っておくものだよ」
私は、もう一度三人の顔を見た。皆、優しそうな表情。そんな中で林檎を食べるのもなんだか気が引けたが、親切は貰っておこう。私は一つ残った林檎を頬張った。
明星は優しい。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
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- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーアイテム
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ラエル(プロフ) - 白樺派先生方をお願いします (2023年4月14日 15時) (
レス) @page34 id: 2dd5f200d4 (このIDを非表示/違反報告)
奏星(プロフ) - はい！是非お願いします！ (2017年11月12日 18時) (レス) id: e5211bd18f (このIDを非表示/違反報告)
有栖川白兎 - 奏星さん» 石川先生は次の話で登場させるつもりですが、北原先生も登場させたほうがよろしいですかね？彼も一応、明星には関係あるので…… (2017年11月12日 17時) (レス) id: 5116200095 (このIDを非表示/違反報告)
奏星(プロフ) - はい！ありがとうございます！ (2017年11月12日 14時) (レス) id: e5211bd18f (このIDを非表示/違反報告)
有栖川白兎 - 奏星さん» 閲覧、コメントありがとうございます。明星の先生方とはいつか絡ませたいと思っていたのでちょうどよかったです。近いうちに書きますね (2017年11月12日 14時) (レス) id: 5116200095 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：有栖川白兎 | 作成日時：2017年11月3日 14時
