邯鄲之夢【文豪とアルケミスト】

矮小 ページ15

「一つは、太宰だよ」

私は、太宰を指差して言った。名前が呼ばれるのを予期していなかったのであろう太宰は、目を見開いて「俺？」と呟く。司書さんも、織田作くんも太宰のほうを見る。視線が太宰の顔に集まった。

「え、え？ 俺のせい？」

混乱している太宰。私は、不思議そうな顔の三人に、「ほら、名字が同じ」と付け加える。名字が同じだけで中也さんには興味を持たれ、目をつけられた。全く、中也さんらしい。嫌いではない。

「大丈夫、太宰のせいだとは思ってないよ」

私は更に落ち込んだ太宰の背中をさすってそう励ます。すると、司書さんと織田作くんも太宰を励まし始めた。まるで子供扱いだ。それでいいのか、太宰。

「ほら、京夜クンもそう言うてくれとるし、元気だしぃや」

「京夜先生は人のせいにする人じゃないですよ、多分！」

それでもなお、太宰のテンションは上がらなかったようなので、言い訳混じりにもう少し。実はこっちの理由のほうが本命だ。

「⋯⋯それに、もう一つ。理由があるから」

三人の目線が、今度は私に集まる。あまり注目されるのは好きではないのだが⋯⋯。仕方なく、私は目を反らし続ける。

「多分、中也さんが私を気に入っていたのは⋯⋯」

司書さんは、ここぞとばかりに私のエピソード聞きたがっているようだ。身を乗り出している。織田作くんは私に変わって太宰の背中をさすり、太宰は半泣きの目で私を見ていた。

「身長が、あんまり変わらなかったからじゃないかな」

直後、無頼派二人の笑い声が響いた。

迷子→←理由

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