短編集 (ページ3)

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「うあぁああああぁぁぁあ」
朝っぱらから洗面所に響く叫び声、パタパタとなる足音。

「おい起きろ、そして表へ出ろ」
「何やねん、朝からやかましいなぁ」
欠伸をしながらそういう簓。
朝から叫んですみませんね、ちょっとご機嫌斜めですか。あぁそうですか！
首を傾げる目の前の奴をちょっと睨みながら叫ぶ。

「簓のアホ！馬鹿！緑！」

寝巻きの第3ボタンまでを開け、襟元を掴み、首元を出す。そして首元を指差し
「ねぇ！この跡どうしてくれるのさ！」
「あー、足りへんだか？」
「ちがうわ張り倒すぞ」
肌には無数の噛み跡、鬱血痕。
見るだけで昨日の行為の激しさが伝わってくるような…。

それがどうした、そんなすました顔でこちらを見てくる簓を土に埋めたくなる。
「…普通に仕事あるんだけど。ていうかこの跡いつ付けたの、まさか私が飛んでからもしてた？」
だって記憶に無いもの。

「何言うてんねん、昨日お前飛んでへんやろ」
「…嘘や」
「嘘やあらへん。Aめっちゃヨ」
「言うな…何も言うな」

深いため息を着いて、しゃがみ込む。
あーなんかちょっと思い出してきたかも。記憶にモヤがかかってる。
先程まで気にならなかった身体中の痛みが、今更伝わってくる。

うわ痛った……これは、モヤかかってくれてて助かった。
穴が無くても埋まりたい。

「朝から叫んでごめん。…昨日、久しぶりだから手加減してねって言った」
「抑えとこうと思たけど、お前がもっと～とか足りない～とか言いよったから遠慮なく」
「…口縫うよ？」
「自分から聞いといてそれかい！」
羞恥で顔に熱が集まる。
今までこんな事あったか？いや、無い。…但し自分の記憶の中では。

「久しぶりやから我慢出来んかったんとちゃうか？お前が」
「"お前が"を強調するな。なんか私がとんでもない奴みたい…」
「え？違ったん？…もしかして嫌やった？」
少し声のトーンが下がる。
「お前それ分かってて言ってるでしょ…」

…まぁ気持ち良かったですよ。ハイ。
身体の状態が物語ってる。覚えてないけど。
久しぶりでテンション上がってたのも事実な訳で。
とはいえこの跡の数は洒落にならんだろ…
あぁ、首元どうやって隠そうか。暫く跡消えないよこれ…
どうしようかねぇ。

寝巻きのボタンを締めながら考えていると、簓の声が飛んできた。
「俺今日1日休みやけど、どうする？」