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26 My old tale. ページ26

春の香りが遠くの島から漂う、
3月31日のこと。
「おや、ルナード様、こんなところに
おられましたか。」
「あ、ルッペルさん。
見て、ここからだとね、私の住んでいた島が
見えるんだよ。」
ルッペルさんは、少し目を細めた。
目が悪いらしい。
無表情な彼の顔が崩れるのが珍しくて、
思わず見つめていた。
「ルナード様。帰りたいのですか?」
ルッペルさんの顔は、また元の無表情に
戻っていた。
「ううん、ここでおおかみさんといる方が、
幸せだから。」
おおかみさん、ですか。
と、ルッペルさんは繰り返して笑った。
絵みたいに、目を細めて笑う。
少し、茶目っ気を感じる笑顔だ。
「若様から、離れないで下さいね。
私では……若様を支えるには及びません。」
今度の笑顔は、溜め息に混じり合って
すぐに消えてしまった。

少しだけ、興味があった。
「ルッペルさんは、
どうしておおかみさんの側にいるの?」
「話せば長くなります。
しかし、お願いをするのですから。
話さなければなりませんね。」
ルッペルさんはこう言うと、ここにいては
風邪を引きますよ、と言って、
谷の方へ手を引いてくれた。

手頃な丸太にハンカチを敷いて座ると、
苔の香りが鼻に入ってくる。
心地いい。

では、と、ルッペルさんは話始めた。

私は、生まれつき足が悪かったのです。
ですが、群れで食いっぱぐれることは
ありませんでした。

他の狼とは違い、私の食べるのは、
ものの魂だったからです。
私は、人を食ろうておりました。
しかし、それも限界……。

ある時からとうとう私は、
仲間の魂を食らうようになりました。
気づかれないように、そうっと……。

しかし、ルナード様、
悪いこととは、ばれるものです。
いつの間にやら、私は、群れにはいられなく
なりました。
誰のせいでしょう。
きっと、誰のせいでもないのでしょう。
私はなんとか、人間に紛れて生きていました。
本当に、長い間。
それでも、そう上手くはいきませんでした。
私は、人間界からも追い出され、
その折り、私は傷を負い、
山の袂で倒れておりました。
そんな私を介抱し、お側に着くことを
お許し下さったのが、若様でございます。

それから、私に残った全て、
若様に捧げると誓ったのです。

ルッペルさんは、語り終えると、
口角を上げ、疲れたように溜め息をついた。
そのしぐさが妙におおかみさんに
似ていて、私は思わず笑ってしまった。

「ねぇ、ルッペルさん、
協力してほしいことがあるんだけど……」

27 Just kidding. ……Not!→←25 Happiness.


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設定タグ:シリアス , ペケーニョ・デレーチョシリーズ , アップルパイ   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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作者名:クインテット | 作成日時:2016年7月7日 22時

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