13 What's a happend now? ページ13
私は〇〇。
家に連れ戻された。
おおかみさんが私を捨てたとは思えない。
でも私は言葉が分からないから。
あなたが最後、
何を伝えたかったかも何となくしか
分からない。
ただ、あんなに怖かった大人達が、
急に私に優しくなった。
どうしてだろう。
何か言っているけれど、一体何?
その日の晩、
おおかみさんが窓を優しく叩いた。
私はこっそり納屋から取ってきた
釘抜きを使って
窓を塞いでいる板を取り外した。
かなり時間がかかったけど、
おおかみさんは私を待ってくれる。
おおかみさんは、
優しく笑って、私の名前を呼んだ。
その笑顔は、
昼間の大人達のように変に飾っていなくて、
安心した笑顔だった。
それに、私は〇〇なんて名前より、
この名前の方がずっと好き。
おおかみさんがくれた初めての贈り物だから。
おおかみさんは、
"絵本"というものを持ってきてくれた。
ページをこちらに向けて、
ゆっくり読んでくれた。
絵があるおかげで、
私にもどんな話か、何となく分かった。
体の下の方が魚の女の人が、
最後は泡になってしまう。
私も、最後はこうなるのかな……?
それからおおかみさんは、
絵を1つ1つ指差しながら、
言葉を教えてくれた。
魚の女の人は、にんぎょ。
船から落ちた人は、おうじさま。
私がたどたどしく繰り返す度に、
おおかみさんは笑ってくれた。
でも、夜は短い。
すぐに終わりが来てしまう。
「さ、もうおねんねの時間だ。
また明日な。ルナード。」
そう言って、姿が見えなくなって。
とうとう、足音も聞こえなくなってしまう。
窓を閉めて、柔らかいベッドに寝転んで、
しっかり毛布を被ったのに、眠れない。
堅いソファの上で、
おおかみさんに抱き締められた方が、
深い眠りに落ちることができた。
どうして?寒いよ。
いつか、おおかみさんと一緒に、
うみを見たいな。
うみに行けば、おうじさまがいるのかな。
いなくてもいいや。
私の手をおおかみさんが握ってくれて、
青いな。なんて、笑ってるのなら。
いつの間にか、朝になっていた。
おおかみさんは、太陽が苦手らしい。
夜には太陽がないのかな。
じゃあ、ずっと夜でいいな。
初めて家の中でご飯を食べた。
あんまりおいしくない。
そんな日がしばらく続いたある日、
大人達に手を引かれて、家を出た。
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作者名:クインテット | 作成日時:2016年7月7日 22時