Fall. (ページ2)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:4,000 hit

2　Good luck your birthday. ページ2

金色の月の夜に、俺は生まれた。

親もただの狼ではないことは、
生まれた瞬間に理解した。

俺はたまたま、化ける能力に長けていたから、一年ほど経つと、
人の姿をとって町に出掛けた。
別に人間が好きだということではない。
ただ、
退屈で兄貴の顔を見たくなかっただけだ。

教会の鐘の音と安らかな祈りの下、
俺は毎日を機械的に過ごした。

時は中世、所はヨーロッパ。
俺はそこで、青年時代を過ごした。

そんなある日、ジパングという国から、
使者が来るという噂が流れた。
どうも、
宗教について学ぼうという理由らしい。
くだらない。

俺は何となく港へ向かった。
特に興味があるわけではないが、
暇つぶしにちょうどいいと思った。

すると、幾重の金の頭がざわつき始めた。

「化けものだ…」

人々が口々に言いながら、
足早にその場を離れていった。

少し人が引くと、女の呻き声が聞こえる。
苦しそうだ。
何かに縛られている。
俺はその女に近づくと
ただひとりごとを呟いた。
「あぁ……動物霊の呪いか……。」
解いてやろうと近づくと、
涙ぐんだ青年が、
彼女に向かって石を投げつけた。

思わず彼女を庇うと、
こめかみに鈍い痛みが走った。
血が垂れる感覚がある。

「ウゥ……。」
彼女を化け物足らしめるものが、低く唸った。

「血に反応したか……。」
眼は血走り、興奮しているのが分かる。
息も荒く、深い。
ゼイゼイという呼吸音が少し煩かった。
飛びかかってくる女をかわすと、
俺は動物霊を引き剥がした。

どうやら、何匹もの動物の呪いが
複雑に絡んでいたようだ。

「大丈夫か？」
力尽きたように倒れこんだ女に声をかけるも、言葉が違うのか、女は反応しない。

助けたからいいだろうと、俺は外套をかけ、足早に歩き去った。