検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:3,968 hit

29 e.g. ページ29

こうして、私たちの3人目の子どもが生まれた。
名前はリュウ。
誰の子でもない、私たちの子。

「わたしにいもうとができるなんて、
うれしいなあ!」
マリははしゃいでいる。
その笑顔は、可愛らしい。
その一方で、その笑顔は、
私を追い詰めているようにも見えた。
妹と呼べるのは、少しの間だけなんだよ。
ヴァリテだって。
私だって。おおかみさんだって。
どうしようもないままで。

「ルナード。島の反対にある、
花を摘んできてくれないか。
ワスレナグサというんだ。」
おおかみさんは、ある日、私に言った。

6月10日。
戦争の激化。
そんな、日のことだった。
私は、おおかみさんの言いたいことが
分かった上で、その場から逃げ出した。
どうしてか分からない。
気の迷いという類のやつかも知れない。

ワスレナグサなんて、この島には
咲いてないじゃないか。


「ヴァリテ、マリ。リュウ。」
若様は、ひとりずつ、目を見て言った。
私はただ、そのお姿を見ることしかできない。
倫理的観点から、
若様を侮辱する者もあるだろう。

私の仕事は、
そんな若様を諌めることではない。
若様の敵を、討つことだ。

「俺たちは、お前たちを愛している。
だからだなんて、言い訳はしない。
ただ、俺はお前たちを失いたくないんだ。
ごめんな。」

若様は、そう言ったあと、
無理やり笑った。
本当は泣きそうなのは、
その細かく震えた声で分かった。
ヴァリテ様は、何かを感じたのか、
その顔に、微かに涙を浮かべている。

「今から、お前たちを大人にする。
このまま、どこか遠くに、逃がす。
だから、どうか、生きてくれ。
頼む……。」

若様はそう言うと、ひとりひとりの
頭に手を乗せ、淡い光を放ちながら、
人を救った。

私には、若様を救うことはできない。
それでも、ここにいるのは、
せめてもの罪滅ぼしのためだ。

「だ?あう?
あれ……私は……?」

「御父様……!
私……まだみんなと一緒に……!」

「御父様……!僕はあなたを、
一生許さないからな!」

最後の、ヴァリテ様の言葉で、
若様はたじろいだ。

「いくらヴァリテ様といえど、
若様に無礼を働く者は、
私が許しませんよ。」

「うるさい!ルッペルも狼だろうが!
何でこんなやつの犬なんてやってるんだ!」

私は、殴りかかったヴァリテ様の拳を、
避けることなく受け止めた。
頬がじんじんと傷んだ。

「ルッペル。
子供たちを、逃がしてくれないか。」

若様は、最後にひとつだけ、
嘘つきな笑いを浮かべた。

30 How come?→←28 Spoof girl and strength boy.


  • 金 運: ★☆☆☆☆
  • 恋愛運: ★★★☆☆
  • 健康運: ★★★★★
  • 全体運: ★★★☆☆

ラッキーアイテム

アップルパイ

ラッキーカラー

あずきいろ

おみくじ

おみくじ結果は「末凶」でした!

今、何日…?

明明後日


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.7/10 (7 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
設定タグ:シリアス , ペケーニョ・デレーチョシリーズ , アップルパイ   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:クインテット | 作成日時:2016年7月7日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。