風に翔ける【究極の絆グリフォン】 (ページ15)

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「ついさっきまで食堂にいたような気がするんですが」

「気の所為だね」

「…うんそうだね、気の所為だね！！」

そうだ、シュウの背後に黒い影がチラついたのも、彼の貼り付けたような笑顔も、きっと私の気の所為だ。…そうだと言ってくれ。

「…、あれ、なんで私が白竜のとこ行こうとしてるの知ってるの、言ってないのに」

私青銅に「ボールを蹴ってくる」とは言ったけど、「白竜に喝入れてきます」なんて一言も言ってない。

「もしかして盗み聞きしたんじゃ」

「グラウンドの鍵なくなってりゃすぐ分かるよ、頭悪いの？」

「さーせん」

瞬間、パスコン！！っと廊下に乾いた音が響いた。それを認識したと同時に、頭にじわじわと痛みが広がっていく。…要するに、叩かれた。

「全く、これだから礼儀を知らないバカの相手は疲れるんだ」

シュウが溜息を一つついた。「どっちがだよ！」と叫びたいのをグッと堪え、負けじと私も口を開く。

「わ、私一応司令塔だし！そこらの同世代の奴らと比べたら…！！

…

誠に申し訳ございませんでした、化身をしまって足元のボールから体を離していただければ大変嬉しゅうございます」

「あはは、自分の立場を理解できたようで何よりだよ」

「ひいっ…」

ダメダメダメ、怖すぎる。真正面からぶつかったら肉体的にも精神的にもボロボロのズタズタだ。

ここでシュウのボールをまともに喰らえば、試合に出られない。ゼロとして戦えない。彼の人との約束だって果たせなくなる。

…ん？約束って…

「何してんの、早く行くよ！」

「…うーん」

「早くしてよ！」

「あああ、ごめんってば」

シュウに腕を引かれ、(寧ろ引き抜かれそう)はっと我にかえる。呪いのように「トロい」だの「話聞け」だの呟く彼に恐怖と悪寒を覚えながらも、頭からは疑問が離れない。

“彼の人”との約束って、なんのことだろう。

思考をいくら廻らせてもとっかかりすら掴めない。思い出せない。絶対に忘れちゃいけない筈の、重要な事だというのに。

はたと気がつけば、私は金属製の大きな扉―グラウンドの入り口前へと立っていた。

そして、その向こうの彼の姿を見留めた瞬間、その疑問は頭の隅の方へ追い払われてしまったのだ。