【文スト】暴いてはいけない。【江戸川乱歩】 (ページ3)

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て _ III ページ3

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「太宰…」

江戸川とAの視線の先にいる男、太宰治。

異能力は『人間失格』、異能力が効かない異能力だ。

「え。探偵君、この太宰とやらは霊感があるのか？」

Aは持っていた物を机に置き、江戸川の耳元で喋った。

「…太宰、この人が視えるの？」

江戸川はそんなAも無視して太宰に訊いた。

Aにかまってるよりも、まずはどうして太宰が視えるのかを知りたかった。

「ええ、まあ。にしても面白い人ですね、足が浮いてますよ」

自分と太宰の共通点は何か。

生憎、江戸川には霊感などない。

今まで数多の事件を解決してきたが、今回のように幽霊を視る事などなかった。

もしかしたら、太宰はありえるかもしれない。

歴代のマフィア幹部で最恐の奴だ、恨みで視えるようになったりしても違和感はない。

「包帯君、君は霊感があるの？」

そう江戸川は考えている内にAは太宰に訊いていた。

幸い、他の社員は違う事をしているため、こちらの不(・)思(・)議(・)な会話は聞こえていないだろう。

「私は霊感など持っていないよ」

「ふぅん、珍しいね。ワタシは尾張A」

「私は太宰治だ」

二人は握手をするが、端から見れば太宰が空中で上手すぎるパントマイムをやっているようにしか見えない。

「太宰、その幽霊、先の連続殺人事件の犯人だよ」

「…え？」

Aがニヒルな笑みを浮かべ太宰の手を解いた。

「探偵君、それは別に云わなくてもよくない」

「別に内緒にしてなんて云われてないもん」

江戸川はお菓子を抱えて、椅子をクルリと180度回して背を向けた。

「あ〜あ、拗ねちゃった」

Aはまたニヒルな笑みを浮かべ、太宰を見る。

その顔はまるでサイコパス、太宰とは違う恐怖を纏っていた。

「さて、改めまして先の連続殺人事件の犯人、尾張A。実は殺されました」

「……何処からつっこめばいいかい？」

太宰は久しぶりに頭を抱えた。

だが、訊くことは瞬時に決まった。

誰に殺されたのか、だ。

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