What's your color？【短編集】

僻み 桜 ページ42

｢ちょーっとA！｣



ライブ映像を見ていたら後ろから大きな声。



｢なーにとみたん｣




よくわからないけど、
なーにじゃなぁいでしょ！もーA！
ってなにか怒っているご様子。



｢また！また二番君ばっかりみて…！！｣



お？と思って画面を見ると確かに丁度良い感じで二番君の見せ場。



｢とみたん、別に二番君を見たかったわけじゃ｣
｢うそ！まえも二番君みてたー！｣
｢いつの話…｣


今気付いたけどこいつ酔ってんな。
心なしか目に涙を浮かべている。



｢Aは、おれよりも、二番君が｣
｢なに馬鹿なこといってんの｣
｢A…おれのことだけみて…｣



ぽろぽろと雫をこぼし、えぐえぐ言いながら涙を両手で拭っているとみたん。
なんだなんだ、可愛いなおいおい。



｢とみたん、私はずっととみたんを見てるよ｣
｢…うん…｣
｢そりゃあライブ映像だもん、皆みるけど｣
｢……うん…｣
｢私の中では、とみたんが1番輝いてるよ｣
｢………そっか｣



私がそう言うと涙でぐちゃぐちゃになった顔でにへっと笑う。




｢へへ…そっかぁ｣
｢だからもうほら、こっちおいで｣
｢うんっ｣



でっかいわんこが私の隣に駆け寄ってくる。
パーカーの袖で顔を拭ってやる。




｢ねぇ、ほんとに俺がいちばん？｣
｢うん、一番だよ｣
｢世界で？｣
｢全宇宙で｣
｢ふふ、やったぁ｣



そう言って私に飛びついて頬をすりすりする。
お酒臭いのを除けば可愛い。
本当に私には勿体ないくらい。ライブ映像をみるとその思いはより強くなる。何度もみて、何度も考える。私の隣で良いのだろうかと。



｢可愛い｣
｢おれかわいい？｣
｢可愛いよ｣
｢おれかっこいい？｣
｢うん、かっこいい｣


私なんかでは到底釣り合わないほど。
卑屈になってる自分は見せないように頑張っているけど、心の中は黒い気持ちが沢山。
それでも離れようとしないのは、私がエゴの塊だから。




｢ほんと、素敵な人だよ｣



素直で純粋で負けず嫌いな頑張り屋。
可愛い可愛い私の恋人。



｢…A、どうしたの｣
｢っううん、何でもないよ｣
｢悲しいかおしてるよ｣
｢疲れちゃったのかな、気にしないで｣



ごめんね、もう少しいい人の私でいさせて。
なんて、悲劇のヒロインみたいな事まで考える。
いつまで、こうしていようか。
私なんかが、ずっとこの子の隣に…。




数秒後、そんな考えは吹き飛ぶことになる。









｢俺はAの隣だから輝けるんだからね｣

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