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「A、ごめんねわざわざ」


直接話したくて、
と微笑む野崎さんを見ると、少し心が安らぐ。



「A、本当に大丈夫?」
「…大丈夫、です」
「本当に?」


何度も本当に、と真っ直ぐな瞳で聞かれ、揺らぐ。


「大丈夫、じゃ、ないです…」
「やっと目を見てくれた」


あのね、
と切り出して野崎さんは私に話をしてくれた。



辛い時は笑顔でいれば良いことがあると思う。
でもね、本当に辛くて、あーもうダメだって、
そう思った時は、頑張らなくていい。逃げていいんだよ。



「でも、もうこれ以上どこに逃げれば」


そう、私は叔母が絶対に来ないような離れた所に引っ越した。
職場も変えて、口外しないようにも言って、
それでもここまで探し当てられた。
もう、どこにいっても無駄かもしれない。


「俺、仕事辞めて東京に行くんだ」
「え?」
「東京に行って、夢叶えてくる」


野崎さんの顔、視線は相変わらず真剣で。


「A、俺と逃げよう」
「何言って」
「いや、命令、俺と逃げろ」


野崎さんの命令はなぜか嫌な感じではなくて、すんなりと私の中に降りていった。


「いいんですか、こんなお荷物抱えてって」
「大丈夫、俺にとってはお荷物じゃないから」
「むしろ空気とかですか」
「いや?宝物」

その言葉を鵜呑みにして、本当に東京に行ってしまうとは、
私ですら予期していなかったのだから、叔母さんにも分かるはずが無かった。



「良かった、Aを笑顔にできて」




そう微笑む彼の隣を、ずっと歩いていけますように。

寝不足 牡丹→←命令 檜皮



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ぽにし(プロフ) - ありがとうございます!リクエストをされた経験があまりないので上手くできるかは分かりませんがやってみますね! (2018年9月1日 11時) (レス) id: d00a8efe67 (このIDを非表示/違反報告)
あやり - いつも楽しませてもらってます!リクエストなんですが、のっくんとお部屋デートのお話を書いて欲しいです! (2018年8月30日 11時) (レス) id: 48605fbcd9 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにし(プロフ) - イヴさん» ありがとうございます!これからもニヤニヤさせられるよう頑張りますね! (2018年8月4日 18時) (レス) id: d00a8efe67 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにし(プロフ) - ことね@ ktnさん» それは良かったです笑 (2018年8月4日 18時) (レス) id: d00a8efe67 (このIDを非表示/違反報告)
イヴ - キュンキュン!! がとまりません!!ニヤニヤしながら読まさせていただいてます!更新(?)頑張ってください!! (2018年7月26日 21時) (レス) id: 6445a912e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽにし | 作成日時:2018年3月12日 19時

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