甘い時間 常磐 ページ34
さっきまでずっと一緒にいたはずなのに
「声が聴きたい…」
こんな気持ちになれる日が来るなんて、思ってもみなかった。
恋愛下手で、好きな人はただ見つめるだけ。
どうなりたいとか、そんなのは妄想の世界。
どうせドラマの中だけだ…なんて卑屈になっていた。
その私を変えたのは、君との出会い。
―――――――――
「どうかしましたか」
駅で具合が悪くなってしゃがんでいた私に、声をかけてくれた一人の男性。
周りの人は自分は急いでるから、と言い訳のような視線を向けるだけだったのに、この人は違った。
「ちょっと、酔っちゃって」
人酔いしやすい私はなるべく通退勤ラッシュを避けていたのだけど、どうしても時間があわなくて仕方なく乗るはめに。案の定、このざま。
「えっと、立てますか」
「あ、はい…」
マスクにキャップといった近寄り難い見た目とは裏腹に、優しげな目と声で手を貸してくれる男性。
「座れそうなところまで連れていくから」
優しくしてくれたこの男性こそ、フォーゲルさんだった。
―――――――――
電話越しの優しい声、私の頭と心を埋めつくしたあの日のキス。
横顔やほのかに香る甘い匂い、私を慰めてくれるその喋り方や今でも慣れることのない手の繋ぎ方。
駆け引きできる位の余裕なんて、あるわけがなかった。
「私だけを見て」
そんなわがままに貴方は笑って、
「もうとっくにAしか見えてないよ」
そう言った。
そしてそれから腕を絡めて、
甘く優しいくちづけをした。
「A」
私の大好きなその声で名前を呼んで、
「今俺すっごい幸せ」
素直な気持ちをくれた。
何度会って、何度好きと言い合っても、またすぐに声が聴きたくなる。そして、会いたくなる。
私はきっと今、貴方に全部染まっている。
感傷に浸っていると鳴り響く電話。
すぐさま携帯を取り出して耳に当てる。
『もしもし、A』
「うん、どうしたの」
『なんか声、聞きたくて』
「ふふ、実は私も」
電波に干渉して、少しくもった声。
そのまま今日の話を少しした。
「ねぇ」
『ん?どしたー』
「つかまえててね、私の事」
優しく、でも強く、ずっとずっと。
彼はククと笑って、
『当たり前』
見ることは出来ないけど、恐らく満面の笑みでそう言った。
甘い時間は、続いていく。
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実はある曲をモチーフにしていたり。
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ぽにし(プロフ) - ありがとうございます!リクエストをされた経験があまりないので上手くできるかは分かりませんがやってみますね! (2018年9月1日 11時) (レス) id: d00a8efe67 (このIDを非表示/違反報告)
あやり - いつも楽しませてもらってます!リクエストなんですが、のっくんとお部屋デートのお話を書いて欲しいです! (2018年8月30日 11時) (レス) id: 48605fbcd9 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにし(プロフ) - イヴさん» ありがとうございます!これからもニヤニヤさせられるよう頑張りますね! (2018年8月4日 18時) (レス) id: d00a8efe67 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにし(プロフ) - ことね@ ktnさん» それは良かったです笑 (2018年8月4日 18時) (レス) id: d00a8efe67 (このIDを非表示/違反報告)
イヴ - キュンキュン!! がとまりません!!ニヤニヤしながら読まさせていただいてます!更新(?)頑張ってください!! (2018年7月26日 21時) (レス) id: 6445a912e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽにし | 作成日時:2018年3月12日 19時