傘 牡丹 ページ31
僕は、雨の日が好きだ。
それはきっと、数年前のあの日から。
―――――――――
｢あぁ〜雨か…｣
｢どうしたの？用事でもあった？｣
｢んん〜｣
雨の日はとことん気分が落ちる。
自分の歌の練習場所は数ヶ所あって、家はお隣に聞こえたら恥ずかしい(だって野崎さんだし…)し、カラオケも自分達の曲の練習には適さないときもあるから、試行錯誤する。
先日良さそうな場所、土手の高架下を発見。
車の音で通行人には気付かれにくそうだし、自分にはよく響いて聞こえて気持ちいいだろう。
今日はそこへ行ってみる予定だったのになぁ。
｢最近練習足りてないからさ…｣
｢無理しないでね｣
｢野崎さんこそですよ！！｣
大好きな推しさんに心配かけないように元気に取り繕う。
練習が終わって、やっぱり歌い足りなくて。
雨…高架下まで行ってしまえば濡れないし、逆に周りにも聞こえないし、いいのかもしれない。
気温も高くもなく低くもなく丁度いいかも。
なんて前向きに決めたらさっそく準備をする。
傘で濡れないように高架下まで急いだ。
発声から声トレまでを済ませ、この間動画も上がった新曲を歌う。自分のところ以外もちゃんと通して。
気持ちいい、そう浸っていると
｢綺麗｣
その声が聞こえたのは自分の携帯から鳴るアウトロが終わった時だった。
嘘、人がいた…？
｢ごめんなさい、隠れてた訳じゃないんだけど｣
｢えっあっ、ごめんなさい｣
｢綺麗な歌声ですね。歌手ですか？｣
｢近からずも遠からず…ですかね｣
｢ほほう…｣
後ろの方から近寄ってきたのはどこか不思議な空気を纏った空気を纏った女性だった。
｢私、たまにここにくるんですけど｣
初めてですか？
なんて笑いかけられ、ふいにドキッとする。
よくわからないトキメキは置いておいて、なぜこの人はこんな所に…？
｢そこ、猫がいるんです｣
指の向いた方を見れば、人1人は入りそうな小屋があった。なるほど、そこにいたのか。
その女性は、猫が捨てられていて、家は事情があって飼えないから里親募集をしながら、貰い手が見つかるまではせめてものお世話をしてるんだと言った。それから、
｢この子賢いから｣
だから数日分の餌があれば自分で調節してるみたいです、と。
｢私はA｣
唐突な自己紹介と共に別れを告げられる。
｢邪魔してごめんなさい、では｣
｢あの、えっと、はい｣
そうして彼女は真っ黒な傘をさして雨の中へ消えていった。
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ぽにし(プロフ) - ありがとうございます！リクエストをされた経験があまりないので上手くできるかは分かりませんがやってみますね！ (2018年9月1日 11時) (
レス) id: d00a8efe67 (このIDを非表示/違反報告)
あやり - いつも楽しませてもらってます！リクエストなんですが、のっくんとお部屋デートのお話を書いて欲しいです！ (2018年8月30日 11時) (レス) id: 48605fbcd9 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにし(プロフ) - イヴさん» ありがとうございます！これからもﾆﾔﾆﾔさせられるよう頑張りますね！ (2018年8月4日 18時) (レス) id: d00a8efe67 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにし(プロフ) - ことね@ ktnさん» それは良かったです笑 (2018年8月4日 18時) (レス) id: d00a8efe67 (このIDを非表示/違反報告)
イヴ - ｷｭﾝｷｭﾝ!! がとまりません！！ニヤニヤしながら読まさせていただいてます！更新(?)頑張ってください！！ (2018年7月26日 21時) (レス) id: 6445a912e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽにし | 作成日時：2018年3月12日 19時
