What's your color？【短編集】

今更 常磐 ページ24

｢顔がいい〜｣


二階の教室からグラウンドを眺める昼休み。


｢Aまた言ってんの？｣
｢だってさ、みて、ほら、はいかっこいいー｣
｢いや俺に言われても…｣



面倒くさそうなにーちゃんを尻目に我がプリンスのゲル君を眺める。



｢顔がどう考えてもドストライク｣
｢はぁ…よかったねーはいはいってあー！｣
｢うるさっ、なに？｣
｢野崎さん！A、野崎さんいる！｣
｢あー、よかったじゃん｣
｢はー顔がいい｣


どっちもどっちだよね、うん、知ってた。



｢は、まってまって待って待って｣
｢なに、どうしたの、にー｣
｢野崎さんに手を振られた｣
｢うわ、なにそれ、最高じゃん｣



ひゃーどうしよう、なんて騒いで手を振り返しているにーちゃんは放っておいて、ゲル君観察を再開。
イケメンっていうよりはなんだろう、かっこいい、男前。
何度見ても顔がなぁ、好きなんだよなぁ。


楽しそうに走り回るゲル君を眺めていると、ふとゲル君がこちらを向く。
えっなにサービス？え？かっこいいな？


にっと笑い手を振るゲル君。
は、まって、まって。
無視したと思われないよう軽く振り返してにーちゃんの方を向く。



｢無理むりむりむりむりムリムリムリ｣
｢なに、あー、ゲルたん？｣
｢いやいやいや、うわうわうわうわ｣
｢なるよねーわかるー｣


もう1度ゆっくり振り返る。


｢あー、A？｣
｢ん？そうーAー｣



私の友人、二番煎じとの会話が聞こえる。私は耳を疑った。


｢にー、ねぇ、にー｣
｢なぁに｣
｢気のせいでなければ今私を呼び捨てした？｣
｢え？普通にいっつもそうだよ｣
｢初めて名前を口にしたところを見たよ｣
｢そうなの？うけるー｣


こんな小さな事で心臓が鳴り止まない。
顔が好きなだけなのに…。


｢ねーA、ゲルたんの顔好き？｣
｢大好き｣
｢声は？｣
｢好き｣
｢体型は？｣
｢好き｣
｢性格は？｣
｢好き…｣
｢ゲルたんのことは？｣



ゲル君のこと…まさか、そんな、ただ私は目の保養として…。


｢私、ゲル君が好きなの？｣
｢今更だよ。鈍いねー｣


私は、普通に恋をしてたのか…。
そう自覚すると、よりかっこよく見えて。



｢にー、今日から私どうしよう｣



挨拶さえままならなくなってしまいそうだ。

2→←精一杯 桜

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す