ただのお手伝いですので【時透無一郎】

髪を切ろう ページ25

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「……あれ、時透くん。髪伸びましたね」




廊下でふとすれ違うときに、靡く髪を見て思った。



「ん、そうかな。確かに、ちょっと邪魔かも……」


「私が、整えましょうか？」

「え、出来るの？」

「はい。得意なんです」



でも。



せっかく綺麗な髪だから、切ってしまうのはもったいないな。


髪を括ったりはしないのかな。



「時透くんは、髪を括ったりしないんですか？」

「Aがしたいなら、いいけど」

「うーん……切ってしまうのはもったいないですけど、靡いてるのがとっても綺麗なんですよね、時透くんの髪は」

「そう」

「このまま少し短くしますね」




一つの絡まりもないまっすぐな髪に、はさみを入れていく。



「前髪も、切りましょうね……」





切り終わった時、時透くんはそれはそれは嬉しそうな顔をしていた。




「できましたよ……どうですか？もっと短い方がいいですか？」

「ううん、これがいい」

「そうですか。良かったです」

「…これからも、僕の髪切ってね」

「はい、言ってくだされば、いつでも」







「……そういう意味じゃ、ないんだけど」





時透くんが呟いた言葉は、私に届くことはなかった。






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