ただのお手伝いですので【時透無一郎】

帰る場所 ページ24

*




時は流れて、出発の日。



「しのぶ様、お世話になりました」

「こちらこそ……時透くんにも、ありがとうございましたと伝えておいてください」

「？えっと、なぜ、ですか？」

「時透くんは、Aがいなくて大分寂しかったようですよ……何でも、家に帰る度に“Aはまだか”と聞いていたようですし」

「そ、そうなんですね……では、私はもう行きますね。
また何かあったら、いつでも呼んでください」



そう言って、屋敷を出ようとするとーー



「Aっ、もう行ってしまうのか！」

「あ、竈門くん……今までありがとうございました。私はもう行きますので……」

「また、会えるか…！？」

「……ええ、もちろん。我妻くんと嘴平くんにも、よろしくお伝えください」

「ッ分かった！！」





竈門くんやしのぶ様と別れて、蝶屋敷を出た。




どうせなら、カナヲちゃんやアオイちゃんにもきちんと挨拶しておけば良かったかなあ。
でも、カナヲちゃんは任務だと聞いたし、アオイちゃんは忙しそうだったから……この間も言ったし、もう会わないわけでもないし、まあいいか。




大分歩いて、時透くんの屋敷に戻ってきた。


久しぶりだなあ……もうお前はいらないから帰れ、とか言われたりしないよね。



い、いやいや、大丈夫大丈夫……



「Aっ！！」




気配もなく、突然に後ろからガバッと抱きつかれた。




「うわあっ！？び、びっくりした…！？」

「寂しかった、やっと会えた……」

「時透くん。ただいま、戻りました」

「うんうん、Aの帰る場所はここだからね。どこにも行かないでね」

「それはそうですよ。だって私、ここを追い出されたら行く場所ないですもん」

「……そうだね。僕、明日の昼は暇だから、一緒に居てね」

「はい、もちろん」




時透くんが変わっていなくて安心した。


……でも、この安心は長くは続かないということを、この時はまだ知らなかったんだ。





*

髪を切ろう→←寂しくなるね

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す