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「___で、一応聞くけど」
作りたての咖哩、二人前
昨日と同じく私たちは机を囲っていた
「これは、君からの好意あるお誘いだと受け取るけれど、良いのかな?」
そんなに " 好意ある " のところを強調されたら、ちょっと語弊があるけれど
「……まあ、そうです、ね」
渋々の肯定だった
それでも事足りたようで、太宰さんはご満悦のご様子
弾む手つきでスプーンを持っては、私を急かした
「早く食べようよ」
「はいはい、待って下さい」
「___頂きます!」
にこにこな太宰さんと手を合わせた後
私は太宰さんの一口目が終わるのを待つ
「うん、美味しい」
その一言が聞けて、やっと安心して食べ始められる
もう懲り懲りだった筈の太宰さんとの食事だけど、何はともあれお口に合って良かった
まあ、お世辞かもしれない、けれど
「さすが、私の未来のお嫁さんだね」
全く、この人は隙あらばそういうことばかり
けれどこの帰り道で、太宰さんの揶揄いにだって少しずつ慣れてきた
受け流しておけば良いのだ
「違います」
__受け流す、だけで良かったのに
意に反してこの口は、余計な一言を口走る
「……今のところは」
「今のところは、ねえ?」
待ってよ、何云ってるの、私
これじゃあ、いつか太宰さんを好きになるフラグを自分で立てたようなものだ
太宰さんが聞き逃すことはもちろんなく、嬉しそうに口角を上げられてしまう
「今日一日頑張った成果だね」
「が、頑張ってたんですか……?」
「そりゃあもう、君に好かれるためだから」
太宰さんが頑張ってた、というのは、あんまり信じられる話じゃなかった
だって終始あんなに余裕を纏ってたじゃないか
今朝を思い返してみれば、始まりはキスだ
かなり段階をぶっ飛ばしてるような気もするけど、あれは太宰さんなりの頑張り、だったのだろうか
「太宰さん」
「ん?」
「元気、出ました?」
「__うん、とても」
今日一日の回想の中で、思い出されたスーパーでの太宰さんのあの表情
太宰さんについて知らないことは多いけど、貴方が私を好いてくれると云うのなら、こんな私でも少しでも力になりたくて
なんて、たった今浅はかに芽生えた思いを胸に「良かったです」と微笑んだ
「君が私の恋人になったら、いつか咖哩好きな友達の話をするよ」
なら私は、今は何も聞かないでおきますね
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カズハ(プロフ) - 太宰さんの言葉選びが最高すぎてキュンキュンしました!!ありがとうございます!! (8月7日 3時) (レス) @page50 id: a9129a72cb (このIDを非表示/違反報告)
カカオ - すみません。「 やきもち日和」のパスワードは何ですか? (2018年6月8日 0時) (レス) id: bcda3478dd (このIDを非表示/違反報告)
神羅°(閲覧専用)(プロフ) - 最高です!!太宰さんがかっこよすぎてキュンキュンしちゃいました(歓喜)ありがとうございますw (2018年3月18日 1時) (レス) id: 7fad23618c (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 太宰さんかっこよすぎて、キュンが止まりませんでした!完結おめでとうございます! (2018年3月4日 1時) (レス) id: fe3c394919 (このIDを非表示/違反報告)
サッピー(プロフ) - この話最高でした!もう一途な太宰さん最高!ついつい顔がにやけてしまいました!完結おめでとうございます!! (2018年2月16日 12時) (レス) id: d2c3ca49e1 (このIDを非表示/違反報告)
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