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「ん、あれ、Aちゃん……?」



思わず肩がびくりと震えた

薄らと開かれたその目が、私を捉えるなり、笑ってるようにも泣いてるようにも細められる

聞かれてしまっていただろうか、なんて不安は次の瞬間には吹き飛んだ

いつも見上げてた太宰さんに見上げられて、困ったような笑みをチラつかせられたら



「私を避けなくて良いのかい?」



俯くようにして肯定した

避ける方が辛いってずっと判っていたのに、こうして太宰さんとはまた話せるのに

何をそんなに、頑なになってたんだろう



「……じゃあ、良ければ今から飲みに行こうよ、ほら、前に云ってた私行き付けの居酒屋にさ」

「あ……でも私、お酒弱いですし……」



頭を過ぎるのは、あの記憶



「大丈夫だよ、私は強いから、ちゃんと家まで送り届けてあげる」



そういう意味じゃなかったのだけれど、咄嗟に断ろうかとも迷ったけれど

ああもう、この際、雰囲気に流されてしまえ



「……行きたい、です」



私が頷くのを確認すると、太宰さんはどうしてそんなにと思うほど嬉しそうに微笑んだ






「わっ、これ、美味しい!」



芳醇な味わいが口内を満たす

街中の、ありふれた見た目の、と或る居酒屋

太宰さんお勧めのお酒のおつまみは、私がお酒を飲む手をいつもより随分と進めていた



「いつもここで飲んでたんですか?」

「そうだね、喜んでもらえたかい?」

「はい、とっても良いところですね」

「誰かと来たのは君が初めてだよ」



そう云って、太宰さんも同じおつまみを口にした

初めてってワードに特別感を感じてしまう

今夜はもう何杯目だろうか



「あーあ、こんなに美味しいなら、太宰さんともっと早く飲みに来れば良かったです」



結構酔ってきてるのは自覚してるつもりだ

表情は云うことを聞かないし、感情そのままに出てしまうし、この口も普段よりお喋りになった

でも良いのだ、なるがままになってしまえば



「……太宰さん、どうかしました?」



と、不意に、太宰さんが、私の方をじーっと眺めるのと目が合って

その蕩けそうな眼差しに、奪われた目を離せないままでいると



「だって、好きな子が目の前で笑ってるから」



Aちゃん、と

甘い声で呼ばれるのは私の名前

自分の名前って、こんなに素敵なものだったっけ



「もう一回、私の頭、撫でて?」

「……少しだけ、ですよ」



酔いの回った私は何にも気付かないで、太宰さんの頭をふわっと触れた



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カズハ(プロフ) - 太宰さんの言葉選びが最高すぎてキュンキュンしました!!ありがとうございます!! (8月7日 3時) (レス) @page50 id: a9129a72cb (このIDを非表示/違反報告)
カカオ - すみません。「 やきもち日和」のパスワードは何ですか? (2018年6月8日 0時) (レス) id: bcda3478dd (このIDを非表示/違反報告)
神羅°(閲覧専用)(プロフ) - 最高です!!太宰さんがかっこよすぎてキュンキュンしちゃいました(歓喜)ありがとうございますw (2018年3月18日 1時) (レス) id: 7fad23618c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 太宰さんかっこよすぎて、キュンが止まりませんでした!完結おめでとうございます! (2018年3月4日 1時) (レス) id: fe3c394919 (このIDを非表示/違反報告)
サッピー(プロフ) - この話最高でした!もう一途な太宰さん最高!ついつい顔がにやけてしまいました!完結おめでとうございます!! (2018年2月16日 12時) (レス) id: d2c3ca49e1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:どんぐり | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年8月16日 17時

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