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「___ふあぁぁ……」
眠気覚ましの欠伸
時刻は目覚まし時計が鳴る五分前
だけどタイマーを早く設定してあるので、今日もいつも通りの時間とはいかなかった
「太宰さん、どうやって起こそう……」
そう、理由は彼
だって国木田さんのあの言葉、回りくどい意味で云えば、太宰さんを遅刻させるなってことでしょう
私の今後のためにも、何としてでも定時に出勤させなくちゃいけない
洗顔、朝食、出勤の支度
淡々と済ませて体一つで家を出た
目的地はすぐ隣、未だ慣れぬ太宰さんのお部屋だ
扉の前でポケットに手を突っ込んだ
___ " いつでも来て良いからね "
同時にふと蘇った昨夜の太宰さんの言葉に、少しどきりとしながら、ソレを取り出す
ソレ、とは、太宰さんの部屋の合鍵だった
「……お邪魔します」
遠慮がちに足を踏み入れたそこは、間取りは同じなのにあたかも違う家のようだった
匂いからまるで違って
少しのお酒、それと、太宰さんの匂いがして
「……あ」
ようやく見つけた部屋の主は、まだ布団を被っていて夢の中だった
「太宰さん、寝てる」
ううん、予想通りだったんだけど、こう、いざ寝顔を前にすると、何ていうか
寝顔すら綺麗なんて、何て恵まれた人なんだろう
「何か、寝顔だと無防備、かも」
__少しだけ
ほんの少しだけだから、と太宰さんの寝顔を拝んでから起こすつもりで、そっと覗き込んだ時だった
「無防備なのはどっちかな」
「……え」
寝起き特有の少し乾いた声は、もちろん他の誰でもない、太宰さんのものだ
一瞬で反転した視界
ぐっと、温もりの中に引き込まれる体
それが布団だと理解した時、その中で更なる温もりがぎゅっと体を包んだ
「おはよう、Aちゃん」
直後、ふと前を見ると
「……おはよう、ございます」
寝起きの笑顔すら素敵で、目覚めが良さそうなのは何よりだけど
ああもう、どうしてこうなったんだろう
「私の寝込みを襲おうとしたの? それとも、寝顔に見惚れちゃってたのかな?」
「いや、その、」
太宰さんは、冷房をガンガンに掛けておいて布団を被る、と云う主義の人のようで
そんな寒い部屋で冷えていた体に人肌が温い
「女の子一人で、それも好意を持った男の部屋に、のこのこ来ちゃだめだろう」
笑顔のまま、太宰さんが視線を下ろした
「しかも寝巻き姿のまま、みたいだね」
「へ?」
_____やってしまった
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カズハ(プロフ) - 太宰さんの言葉選びが最高すぎてキュンキュンしました!!ありがとうございます!! (8月7日 3時) (レス) @page50 id: a9129a72cb (このIDを非表示/違反報告)
カカオ - すみません。「 やきもち日和」のパスワードは何ですか? (2018年6月8日 0時) (レス) id: bcda3478dd (このIDを非表示/違反報告)
神羅°(閲覧専用)(プロフ) - 最高です!!太宰さんがかっこよすぎてキュンキュンしちゃいました(歓喜)ありがとうございますw (2018年3月18日 1時) (レス) id: 7fad23618c (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 太宰さんかっこよすぎて、キュンが止まりませんでした!完結おめでとうございます! (2018年3月4日 1時) (レス) id: fe3c394919 (このIDを非表示/違反報告)
サッピー(プロフ) - この話最高でした!もう一途な太宰さん最高!ついつい顔がにやけてしまいました!完結おめでとうございます!! (2018年2月16日 12時) (レス) id: d2c3ca49e1 (このIDを非表示/違反報告)
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