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一瞬、周りの音が消え去った
太宰さんの声が、言葉だけが、頭の中で余韻深く反芻された
「だ、だめです!」
熱い体に冷や汗
胸がざわついて仕方なかった
ぶんぶん首を振りたかったけど、顎に太宰さんの手が添えられてる身でそんなの無理で
「ええー、じゃあぎゅーってしたい」
そういう問題ではないのだ
今この状況で既に心臓がやばいというのに、これ以上距離を詰められては困る
「ぎゅ、ぎゅーもだめです!」
って云ってるのに
「……え、な、えっ!」
「だめって云われてもしちゃうもんねえ」
太宰さんは、少し屈んで、腕を私の体に回した
触れられているところが余計に熱を持って主張する
「キスはして良いか尋ねたけれど、ギューは " したい " って云ったからね」
「へ、屁理屈……!」
「悪いけど私、我慢は苦手なのだよ」
ぎゅーっとされてる証拠とでも云いたげに、耳につくそれはそれは甘い声
「キスは我慢してるのだから偉いだろう?」
加えて少し甘えた、あざとい口調
褒めてくれ給え、なんて、ときめきをくすぐるには十分過ぎる
ドキドキの頂点にある心はなかなか帰って来ない
「結局、あの女の人は、その」
「気になる?」
何か悔しい、けれど
「……はい」
「ふふ、あれはね」
____言葉が出なかった
朝っぱらから嫉妬して、バレて恥ずかしい思いをした挙句、こんな風に振り回されてると云うのに
見間違いで、元凶は自分、だったなんて
「君の隣に住めることになったお祝いに、ちょーっと仕掛けた悪戯の仕返しに来たらしくてね」
恥ずかしいにも程がある
確かに急いでたから、ちらっと確認しただけだったけど、でもそれなりにショックだって受けたし吃驚して凝視もしたし
「何で私、見間違えたりなんか」
「そりゃあ昨夜あんなに飲んでたから、まだお酒が抜けてないんじゃないかい?」
「……おさけ」
「そう、お酒」
聞いて、思い出したように頭痛が襲ってきた
ガンガン、ズキズキ、これはもしかして二日酔いの痛みなのだろうか
「そういえば朝からしんどくて……私、昨日太宰さんと飲んだんですか?」
頭痛と同時に浮かんだ疑問を、そのまま太宰さんに投げ掛けると
「おや、覚えてないのかい?」
体を離して、頷く私を見た太宰さんは
「妬いてくれたのは嬉しいけど、昨夜のことを覚えてないなんて」
" これじゃあ足し引きゼロだね " と、企みを含んだ表情で笑った
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カズハ(プロフ) - 太宰さんの言葉選びが最高すぎてキュンキュンしました!!ありがとうございます!! (8月7日 3時) (レス) @page50 id: a9129a72cb (このIDを非表示/違反報告)
カカオ - すみません。「 やきもち日和」のパスワードは何ですか? (2018年6月8日 0時) (レス) id: bcda3478dd (このIDを非表示/違反報告)
神羅°(閲覧専用)(プロフ) - 最高です!!太宰さんがかっこよすぎてキュンキュンしちゃいました(歓喜)ありがとうございますw (2018年3月18日 1時) (レス) id: 7fad23618c (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 太宰さんかっこよすぎて、キュンが止まりませんでした!完結おめでとうございます! (2018年3月4日 1時) (レス) id: fe3c394919 (このIDを非表示/違反報告)
サッピー(プロフ) - この話最高でした!もう一途な太宰さん最高!ついつい顔がにやけてしまいました!完結おめでとうございます!! (2018年2月16日 12時) (レス) id: d2c3ca49e1 (このIDを非表示/違反報告)
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