@花屋 ページ8
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悩みに悩んだあの日から数日、俺は何とか決めたプレゼントを手に、彼奴との待ち合わせ場所に足を進めていた
太宰の云っていた通り、今日は俺たちの記念日だ
「彼奴が喜ばなかったら……」
道中何度もそんなことを考えてしまう
何しろサプライズなんて初めてだった、いつも一緒に店を訪れて、好きなのを選ばせてやってたし
けど姐さんがあんなこと云ってきて、俺自身、彼奴が遠慮してるような気がして、もどかしかった部分もあって
「やべえ、もうすぐ着いちまう」
もう後二つ角を曲がれば待ち合わせ場所、彼奴と知り合い出した頃、密会に使っていた公園だった
今となっては首領も公認の付き合いのため、密会なんざする必要はねえが、たまに二人で立ち寄る思い出の場所だ
最後から二番目の角を曲がった、刹那、馨しい香りが鼻をかすめる
「__花屋、か」
視線をやれば花で一杯の小さな店、まるで己を買えとでも云いたげに、風に乗せてその芳醇な香りを漂わせてくる花々
「……いやいやいや、ベタ過ぎだろ! そんな小っ恥ずかしいこと出来るかっての!」
気が付けば俺の中の俺に声を荒らげていた
記念日に花を贈るとか何処のロマンチストだよ
ドラマや漫画ではよく見かけるが、実際にした奴を俺は見たことも聞いたこともない
しかしおかしなことに、俺の足は花屋に向いていて
「花言葉? 知るかそんなもん」
花毎に添えられた、花言葉なるものの説明書きを眺める俺に、気が付いた店員に声を掛けられる
「いらっしゃいませ、ただ今恋人に贈る花束限定セール中でございます、いかがですか?」
「…………」
___5分後
「まじかよ俺、信じらんねえ…!」
思わぬ所で時間を費やしてしまった俺は、例の公園目指して走っていた
右には先日買ったプレゼント、左には先程買った花束を手にして
人通りが少なくて幸いだった、こんな姿を誰かに見られたりしてみろ、恥ずかしくて死んでしまう
自分が勝手にした事に悶えながらも、ちらりと花束を見れば少しの期待が躍り出る
「彼奴、喜ぶかな」
そんな俺の耳に鳴り響く、スマホの着信音
未だスマホへの怒りは収まってねえってのに、またも俺を苛立たせる気か
足の速度を緩めながらスマホを取り出すと、表示されている『A』の文字
彼奴からの着信だった
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留羽謝(ルーシェ)(プロフ) - 中也さんイケメンっ!!ありがとうございます!美味しかったです!!! (2018年2月8日 22時) (レス) id: 1767e80507 (このIDを非表示/違反報告)
世界のバカっこ!(プロフ) - 無事死亡。どんぐりさんほんといつもいつも私をキュン死させてしまう作品を作って……有難うございますっ!!中也さんかっこいい夢主ちゃん可愛い。最高でした(震え声) (2017年11月11日 12時) (レス) id: 391940a815 (このIDを非表示/違反報告)
ジュリ - プロポーズキターーー−−−−−−−−−−−−−ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!! (2017年11月3日 22時) (レス) id: 84c51744c8 (このIDを非表示/違反報告)
ジュリ - 中也かっこいい!つーかうぶかよ! (2017年11月3日 22時) (レス) id: 84c51744c8 (このIDを非表示/違反報告)
れんれんれれれ(プロフ) - 中也さんがかっこよくて!!中也さん目線の時はかっこよさと可愛さがあったのに夢主目線の時はただただ格好よくて………ドキドキしました!! (2017年11月3日 21時) (携帯から) (レス) id: f40e23ddec (このIDを非表示/違反報告)
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