【文スト】喜ぶ顔が見たくて

＠太宰 ページ4

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完全に彼奴のことで、頭がいっぱいになっていた

じゃなきゃこの俺が気付かねえ訳あるか、憎たらしいことこの上ない、青鯖の気配に



「中也、宝石なんて買うの？」



ちょうどジュエリーショップから出た矢先、太宰の糞野郎と出くわした

目に見えてにやにやする太宰に、苛立ちが溢れ出す



「うっせえ俺のじゃねえよ」

「へえ、じゃあ誰に？」

「それは」



Aだ、と云いかけた口を、慌ててつぐむ

太宰の前で彼奴の名前を出したくない、その耳に彼奴の名前が入るのすら嫌だった

しかしそんな俺を嘲笑うように、太宰が云い放つ



「Aちゃんでしょ」

「…………」



黙り込む俺

面白がって覗き込んでくる太宰



「何も云い返さないってことは中りだね」

「…………」

「一人で買いに来てるところを見ると、Aちゃんにサプライズかな？」

「太宰の分際で、彼奴の名前を呼ぶな」



低く呟き睨み付けたが、太宰の云ってることが全部正解なのがかなり癪だ



「わあ、嫉妬？ 男の嫉妬は醜いよ、中也」

「黙れ、街の真ん中で潰されてえか」



ギュッと力が入る拳、太宰はそれを見てなお、愉しそうに笑っていた



「ああそっか、もうすぐ君たちの記念日なのだね」

「何で手前が知ってんだよ」

「やだなあ、好きな子が大っ嫌いな奴と付き合い始めた日なんて、忘れられる訳ないだろ？」



ほらこれだから、だから此奴とは、Aの話をしたくなかったんだ

俺は改めて太宰に鋭い視線を送る

牽制の意をこれ以上ないほど強く込めて



「Aは俺の女だ、手出すなよ」

「君の、ねえ？」

「手前なんかには渡さねえ」



街中だが、軍警が来る前に逃げりゃ何も問題はない

と、太宰を殴り飛ばす方向へ、気持ちが着々と傾いていたその時




「まあまあ、何も買わずに出て来たってことは、迷ってるんだろう？」



図星だった



「ふふ、中也は本当判りやすいなあ、私ならネックレスでもプレゼントするけれど」



いや、誰も手前の意見は聞いてねえよ

本来ならばそう突っ込むところだが、切実に悩んでいた俺は思わず太宰に聞き返す



「……な、何でネックレスなんだよ」

「気軽に身に付けやすいし、可愛いものもたくさんあるからね、それにネックレスには束縛の意味も込められているのだよ、素敵じゃあないか」



＿＿＿ " 君があげないのなら、私があげようかな "

何よりもその最後の一言が、俺の選択肢にネックレスをぶち込んだ



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