【番外】我慢と覚悟 ページ43
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背中に、床が、冷たい
私を見下ろす熱のこもった蒼眼が、私の体温を一瞬にして焚き付けて、心臓が痛むほどうるさくなる
押さえ付けられた手から弱々しく力が抜けて
「覚えてろっつったろ」
低く掠れたその声に、鼓膜が大きく揺らされた
「わす、れた、もん……」
まだ心の準備が追い付かない
恥ずかしさが天邪鬼の手助けをする
首領への報告を終えた直後のこと、やっぱり上手い事帰ってしまおうと逃げ足を働かせたのが、中也の癇に障ったらしかった
手前に思い知らせてやる、と
有無を云わされず中也の家へ連れ込まれ、そして今に至る訳である
「へえ、この状況でまだそんなこと云うのかよ」
「だ、だって、むり…!」
「悪いが俺ももう無理だ」
せめてもの抵抗に顔を背ければ、構わず口付けを落とされたのは熱い耳
中也の息遣いが余計なおまけとなって、ついでに私を揶揄った
あーもう恥ずかしさで胸がはち切れそう
「あのなあ、俺は手前が好きなんだぞ」
「……う、ん」
「好きな奴に触れなくて平気な野郎がどこに居る」
ぐっと力の込められる中也の手は、ちょっぴり痛かったりもしたけれど、そんなのはどうでも良くて
嫌でも伝わる中也の真剣な眼差し
上手く言葉には出来ないけど、何だか、胸の奥がぎゅうっとなって
「俺はずっと我慢してきたんだ、手前も早く覚悟決めろってんだよ」
力強い言葉が、羞恥も躊躇いも全部、私の中から押し流してゆく気がした
「…………判った」
__いや、例えそれが気の所為だとしても
この際そんな気の迷いに乗っかってしまえ、だって、私も中也が好きなのは本当に本当なんだから
「覚悟、決める」
中也に届くか届かないかくらいの呟き
まあ彼は決して聞き逃してはくれないだろうけど
その証拠にほら、私の手首を掴んでた筈の中也の手が、私の手の平を取って指を絡めてくる
「……ど、どうしたら良いの」
半ばどうとでもなれと思って、中也に主導権を投げ捨てるつもりで小さく問い掛けてみれば
聞こえたのは満足そうな溜め息
「とりあえずキスさせろ」
寸分の迷いもなく即答された返事に、意を決して中也の方へと顔を向けたらもう
「二度と俺から目ェ離すなよ」
待ったなんて云えない距離で、蒼い瞳が微笑んだ
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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
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