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「ナカハラ君、お待たせしてすまなかったね」
そもそも私はずっと、首領との面会を控えて待っていたのだった
首領の言葉に、慌てて立ち居振る舞いを改めて、滅相も無いと首を振る
そんな私に、首領は笑い掛けて
「私は中で待ってるから、ナカハラ君との話が終わってから入って来ると良い」
「え、待っ、ナカハラさんと話すことなんて」
バタン
重々しい扉の奥へと、首領は先に消えていった
ナカハラさんとの間に流れる沈黙
目すら合わせてくれない見張りの黒服
何とかこの奇妙な空気を打ち破って、ナカハラさん相手に口を開いた
「じゃ、じゃあ私、首領とお話があるので」
その直後
「ちょっと待て」
そんな言葉と共に腕を掴まれた、かと思えばそれは後ろ手に引っ張られ、成す術も無く体が空を横切り
飛び込んだ先は、ナカハラさんのすぐそば__若干触れ合うほどの距離の場所だった
「え、ちょっと!」
目まぐるしい一瞬
遅れて漸く反応が追い付いた
抱き締めるでも、ぴったり引き寄せるでもなく、間違いが起こりそうで起こらぬこの距離感で
その端正な顔だけが私の耳もとへ傾けられた
わざと息を多く含んだ低めの声は
「___なあ、」
意図せずしてか、それとも確信犯か
囁きは吐息と共に耳をかすめて、ほのかな甘い痺れとなり心臓を跳ねさせた
掴まれたままの腕から、どんどん熱が駆け巡る
「な、なに…っ」
頭が真っ白になって、でも多分、顔は熱いから真っ赤になってるんだろう
ああ、やばい、心臓が悲鳴を上げそうだ
「なーんてな」
「……へ」
突如くしゃっと私の髪を撫でたのは、大きなナカハラさんの手
遠慮なく髪をわしゃられてしまってから、ナカハラさんの悪戯っ子な笑みが覗いた
「チビ呼ばわりした仕返しだ阿呆」
___してやられた
*
火照る顔を手で扇いで冷ましながら、逃げるように駆け込んだ執務室
無理やり呼吸を落ち着かせて、部屋に入るやいなや首領に紙束を差し出した
首領は無言でそれらに目を通す
それからしばらくして
「今日はこれだけかい?」
「……これ以上は見返りを要求します」
視線を逸らすことなく、背筋の凍るような首領の微笑に応戦しながら
「私はマフィアの人間ではありませんから」
一言、そう告げた
「……良いだろう、ところで顔が赤いけど」
「気の所為です!!!」
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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
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