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私は知っている
この広い世の中には、『混ぜるな危険』と、口を酸っぱくして謳われる存在があるのだ
「おい、鳴ってんぞ」
中也とのくすぐったいような気まずさを、あっけらかんと切り裂くように鳴ったのは、私のスマホが着信を知らせる電子音
「ああ、うん、鳴ってるね」
「いや、出なくて良いのか」
「ああ、うん、そうだね」
「手短に終わらせろよ」
まだ作戦立案中だからな、と、釘を刺してくる中也
だけど私の耳には、そんなの全然入ってこなくて
「やっぱりか……」
取り出したマイ・スマートフォン、目に入った画面に映る着信相手の名前
予想通りの相手に、気が気でない
「___も、もしもし」
耳に当てたスマホから聞こえてきたのは、無駄に色っぽくて柔らかい声
「やあ、Aちゃん」
私の名を呼ぶその声はご機嫌なようで、電話の向こうにはきっと、にっこり笑顔の彼が居るのだろう
「今朝は手が離せなくて、すみません」
「良いのだよ、お陰で一日に二回もAちゃんと話せたしね」
さらりと吐かれた甘い台詞は遠慮なくスルーだ
それにしても
「め、珍しいですね、だざ___ん"っ、ん"ん"、貴方から急に連絡を寄越してくるなんて」
「そう? Aちゃんが良いなら、毎日心中にお誘いしても良いのだけど」
「心じゅ___あ、いや、デ、デート? はお断り致します!」
早く切り上げたいのに、どうでも良い話が二転三転
おまけに「なぁに? Aちゃん、私とデートがしたいの?」なんて
ここはもう素直に、また後でにしてもらおう
「あの、やっぱりまだ仕事が立て込んでて」
諦めた私が、電話を一旦切る方向へ話を持っていこうとしたら
スマホは、「仕事ねえ」と、勘ぐるような相手の声を届けてきて
「……ふふ、Aちゃん今、あの脳筋蛞蝓と一緒だったりして」
いやどうしてそう頭が切れるのか
お見事正解、全くその通りです
居ます、居ますよ目の前に、貴方様のおっしゃる蛞蝓さんとやらが
なんて、云えたらどんなに楽かこの野郎
「ななな蛞蝓! 蛞蝓可愛いですよね!」
電話の向こうの彼と、目の前の彼
『混ぜるな危険』と謳われる存在の一つだ
彼らの関わる面倒ごとは、きっとそんじょそこらの面倒ごと程度じゃ済まないのだから
どうか、電話越しに混ざらないことを祈る
「___手前、今誰と話してる?」
心の底から、切実に
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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
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