【文スト】ナカハラですが

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「あ"？ 手前それ、どういう意味だ」

「それは困ったなあ」



苛立ちを全面に押し出した低い声と、高らかに笑い飛ばす明るい声

それだけ聞けば、正反対の反応

だがしかし、二人して私に突き刺してくる視線はどちらも同様に酷く痛かった



「だだだだって、ナカハラさんうるさいから」

「怯えて云う割には大口叩くのな」

「それに乱暴そうだし」

「手前みたいな失礼な奴に云われたくねえよ」



始まってしまった口喧嘩

さしずめ第二回戦と云ったところ

ここで、唯一の止める手段だと思われてきた、首領の言葉が降り掛かるも



「君たち本当に仲が良いねえ」

「誰がこんなチビと！」
「誰がこんな莫迦と！」



それは内容による、と云うことが判明する

目を丸くする首領、冷や汗を流し始める警護の黒服、でももうそんなの知ったこっちゃない

私とナカハラさんは同時に顔を見合わせ、飽きずに云い合いを続けた



「莫迦って何、意味判んない」

「手前こそ今、チビっつったろ」

「莫迦って云った方が莫迦なんだからね」

「じゃあ手前がチビじゃねえか」



ああもう、売り言葉に買い言葉、憎まれ口には悪たれ口といった感じで、だんだん収集も付かなくなってきた

小声で挑発され続けた恨みを、今こそ晴らそうと思ったのに、ナカハラさんの減らず口は手強い

全く、お陰で余計に腹が立つ

そんな私を我に返したのは




「……報酬をつり上げようか」




顎に手を添える首領の一言、だった

報酬、つり上げ？

聞き間違いだろうか

口を止めて首領を振り返った私に、首領は口もとに不敵な笑みを浮かべた

って、いや待て、私は



「普段の依頼より報酬を高く付けよう」



ナカハラさんと一緒の依頼なんて



「ポートマフィアが、出来る限り君の望む見返りを用意する」



仰せつかる気は



「そう云えば今度、彼らが主催するパーティーがあったねえ、様々な組織の重役が参加するらしいが」

「…………」

「しかし、確かあれは、男女ペアじゃなければ参加出来なかった筈」



ない

こともない、かも


首領から発せられる魅力的な言葉に、思わずごくりと喉が鳴った

様々な組織の重役らが集まるパーティー、それは私にとって、絶好の " 仕事場 "

おまけにマフィアから報酬サービスのお約束ときた



「し、仕方無くですからね」

「決まりだ」



結局全て、首領の思い通りとなったようだ





「……報酬に釣られる莫迦女」

「うるさいチビ」



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