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今は夜、マフィアの時間帯
ビルの最上階なんかより眺めの良いこの場所で
私が離れられないのを良いことに、中也は軽い口付けを何度も降らせる
「も、駄目だって!」
「何が駄目なんだよ」
「だ、だ、だって! 恥ずか、しい」
何とか手で口元を覆って意思を表明
仕事が終わったら、と云った割には、もう今からして手が早いんだから心臓がもたない
___素敵帽子のくせに、何さ
「これくらいで恥ずかしがるたぁ、手前はまだまだお子ちゃまみたいだな?」
「う、うるさいうるさい!!!」
乗るな乗るな、これは挑発
こうして私の負けず嫌いを突っついて、結局は中也の思うままにキスしたいだけなんだ
そんな子供じみた策、私は嵌ってやらないもん
「……ふ、照れ過ぎだろ」
そんな、愛おしそうに見つめてきたって
この手は絶対にどけてやらないし、好き勝手キスもさせてやらない
___今は、やらない、けど
「ちゃんと任務が終わったら、良い、よ」
これくらい甘くなったって、誰も怒らないよね?
ああ、今この瞬間の、中也の嬉しそうな顔といったらきっといつまでも忘れない
ちょっぴり癪だけど、中也のこういう顔が見られるなら、恥ずかしいのを克服しても良いかもしれない
そんな私達を現実に引き戻したのは、着信を知らせる端末の電子音だった
「__はい、中原ですが」
今のうちだ、出来る限り落ち着かなきゃ
ほら、顔を手で冷やして、深呼吸して、外の空気で気を紛らわせて
ってこっちは一生懸命なのに、努力も追い付かないうちに、中也は電話を終えてしまって
「首領がお呼びだ、行くか」
「は? 行くかって、どうやって」
「ちゃんと捕まっとけよ?」
いやいや、「離したらぶっ飛ばす」って、いくら私にその気はなくたってつまりそれが意味することは
「ちょ、待って、まさかこのまま、」
「黙って俺に抱き着いてろ」
「わっ、無理だって、…もうっ、莫迦!!!」
声を上げて怒る私を、中也はまるで悪戯っ子のように無邪気に笑って
揺れた拍子にぎゅっとしがみ付く私に、今度は優しい視線を落としてくる
中也は私を大事そうに抱き持った体で、近場なビルからビルへと渡り弾みを付けると
「報告が終われば任務完了だな」
夜闇に光の散らばった、ヨコハマの街へ飛び出した
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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
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