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「そこ、段差あっから気ィ付けろ」
「あ、ハイ」
相変わらず繋がれたままのその手を引かれ、中也の隣を追う私
ヒールとドレスに苦戦する私に、ゆっくり歩幅を合わせてくれる中也
悔しいけれど、中也の見事なエスコートに、私はただただ身を任せるばかりだった
「おう、素直じゃねえか」
「う、うるさい」
優しい言葉だけじゃない
中也はずっと、さり気なく気を遣ってくれていた
人波の中では庇ってくれて、他愛のない話も途切れないように付き合ってくれて
何よりこの、気障な王子様スマイル
「__ずるいなあ」
ぽつり、思わず心の声が零れ出た
だって、認めたくはないけど、
確かに中也は顔だけは良いし、エスコートも様になっちゃったりしてるし
と、悶々としていると
「ポートマフィア五大幹部の、中原中也様?」
甘ったるい声だった
見れば、華やかに着飾ったご令嬢が一人
「あら、そちらはお連れの方?」
美人さん、だ
ドレスに着られてしまってる私とは違って、お色気ドレスを着こなしてて、且つナイスバディ
あ、これ、隣なんかに並ばれたら、完全に見劣りしちゃうやつだ
なんて、伏せた目で見やりながら、そっと後ずさりをしかけたその時
「ええ、そうです」
握られていた手が引っぱられて、されるがままに引き寄せられた先にて
ふわりと、逞しい体温が私の全身を包み込む
「ほら、此奴、すっげえ綺麗でしょう?」
私を腕の中に収めて、中也は得意げに云い放った
「__え」
喉が、息を呑む音がした
中也の行動も言動も、ちょいと想定外が過ぎたものだったから
綺麗な訳ないってば、と心を覆う、マイナスな自信
こんな本物の美人さんを前に腰が引ける
いやまあ、ちょっと、ほんのちょーっとだけ、嬉しくないこともないけど
「随分と親しげなご様子ですのね?」
美人さんの言葉、何処か刺々しい気もするそれに、中也の小さく笑うのが聞こえた
「此奴は、俺の女ですから」
一瞬駆け抜けた、熱い衝動
心臓を跳ね上がらせるには十分過ぎて
っていやいや待って、どう考えたって " 今限定 " の話でしょうよ
うんうんそうだ、中也の女なんて、そんなの願い下げに決まってる
そうだ、うん
「___っと、トイレ!」
その筈なのに、何故か秒読みで爆発しそうな心臓を抱えて、私は一旦避難することにした
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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
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