【文スト】包帯アレルギー

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昨日、結局どんな風にして帰ったのか、ずっと緊張でいっぱいいっぱいだった私は、ほとんど覚えていない

たった一つ、頭から離れないのは

＿＿ " まあ、のんびり覚悟を決めておきなよ "

別れ際、太宰さんに告げられたそんな台詞







「まあねえ、太宰の奴、アンタにはとびきり気を掛けて優しくしてたから」


探偵社は医務室にて

患者用の寝台に腰を掛けながら、くすくす笑ってそう云うのは、私を見習いとして雇う与謝野先生だった



「アンタが太宰を好きになるのも、何もおかしいことはないと思うけどねえ」

「や、あの、それはまた違う話で！」



笑い声を含む言葉に息を呑む私とは相反し、至って涼しい表情の与謝野先生



「おや、否定はしないのかい？」

「そ、それは」



太宰さんなんか好きじゃない、なんて

そう否定出来るものなら、包帯アレルギーだって少しはましな嘘になるんだろうけど

言葉も思考も詰まって、唸るように項垂れる



「アンタも素直になりゃ良いのに、ってそれが出来たら苦労しないんだろうけどねえ」



宥めてくれる与謝野先生に「善処します」と弱々しい目線を送った

その時、医務室に軽快なノック音が響いて




「与謝野さん、社長がお呼びです」



そんな声と共に現れた人影

見紛うことのないその立ち姿、私の胸をざわめきでいっぱいにする甘い影


「やァ太宰、わざわざ悪いねえ」

「いえ、何てことありませんよ」


与謝野先生を呼びに来た太宰さんが、申し分ない笑みで受け答えながら

ちらりと私に目をやったりするものだから

私は思わず、全力で顔を逸らしてしまって



「じゃあA、妾ちょっと席を外すよ」

「……え、あ、待っ」



その間に立ち上がってしまった与謝野先生

慌てて追い掛けた先は、誰でもない、太宰さんその人に塞がれる



「さて、社長の用は伝えたよ、次は私の用を聞いてもらえるかな」



手を引いて、私を元の寝台の上へ導く彼



「……何の用ですか」

「君を抱き締めるって用さ」



今日はまだだったからね、と

与謝野先生が出て行った扉の閉まる音と同時に攫われた私の体は、すっかり砂色の外套の陰に包み込まれる



「ちょ、太宰さん、離して下さい……！」

「それは聞けないお願いだなあ」



ああ、もう、この人のこの腕から逃れられた試しなんてありっこない

振り払えない私も私、なのは知らない振りだ



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