1人じゃないから複数形 (ページ19)

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side：M

ガラガラで潰れた声ではあったけど、時折咳き込みながらも撮影と取材はいつも通りにこなしていた。

振り入れは普段より覚えるのに苦戦していたし、何よりダンスにキレがない。珍しく早めにバテていた。

打ち合わせ。意見なんてほぼ言わずに、目を潤ませながら咳を我慢して、我慢できずに咳き込んでの繰り返し。

前髪とマスクで隠されているから目元しか見えないけど、赤くなっているのがよくわかる。

そして終わったと同時に、机に突っ伏してしまった。

次々飛び出す咳に抗えず、そのままゲホゲホと背中を揺らす。

昨日と変わって、重たく絡みつくような嫌な咳だ。

「よく頑張った。家帰ってすぐ寝よう、な？」

背中をさする優斗の言葉に突っ伏したまま、うんと頷いた作間。

首元を触ったガリさんが顔を顰める。

「完璧にぶり返してるよこれ」

「スタッフさんから体温計借りてくる、あと飲み物とかも持ってくるわ」

はしもっちゃんがそう言って部屋を出て行った。

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あれから帰宅してすぐにシャワーを浴びて、うつしたくないから入ってこないでねと言い作間は自室に籠ってしまった。

水分やら薬やら冷えピタやら、必要そうなものを抱えて。

「これだけ一緒にいてうつしたくないって今更じゃね？」

とガリさんが大真面目な顔で言う。間違いない。

作間の言葉はスルーして、ちょこちょこ様子を見に行こうということが決定した。