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「美梨ちゃん、冷たいよ…」
1人嘆きつつ家に帰っている途中のことだった。
「おめでとう、及川徹くん。君は悪魔様に選ばれた」
は？何なんだ？危機を感じて逃げようとするも、あっさり取り押さえられてしまった。
こいつ、力強すぎだろっ！ヤバイじゃん！
「逃げようだなんて思わないでね？」
意識が遠のく。
「君は醜い化け物に姿を変える」
見ると、俺の腕はけむくじゃらのナニカに変わっていた。
(君の姿、お借りします)
目の前の男が風をまとい、俺の姿に変わった。そこから先は覚えていない。
あれ、ここどこ？…あれ、声が出ない…
そして自分の体を見て気づく。
な、なんだよ、これっ！俺の姿じゃない。そうだ、あの男に！
どうしよう…そうだ。帰って母さんに相談を！
家まで走ってドアを開ける。鍵はかかっていない。リビングにいる母さんと父さんの所に駆け寄る、が。
「きゃあああ」
「なんだ、こいつは、逃げろ、母さん！」
包丁を取り出す父さん。俺は怖くなって逃げた。
そうだ、岩ちゃんに会いに行こう！岩ちゃんなら気づいてくれるはず！いたよ、岩ちゃん！
「な、なんだ？…化け物！逃げるぞ、及川」
及川…？よく見れば岩ちゃんの後ろには、俺の姿をしたアイツ。そうだ、こいつが悪い。こいつさえ潰せば、俺は戻れるはずだ…
俺は迷わずアイツに飛びついた。だが。
「ちょっ、何しやがる！及川に手をだすな！」
うっ…突き飛ばされて、腰を打った。痛い。
「警察呼べ、及川。ほら、逃げるぞ」
岩ちゃんはそう言って逃げていった。
「警察だ、撃つぞ！じっとしろ！」
俺、なんでこんなことになったの？今の自分から抗っただけ。なんで、嫌だ、撃たれたくない。包囲はだんだん狭く近くなっていく。だけど諦めたくなくて、逃げ出した。
「待て！待ちなさい！」
待ったら殺す気でしょ、知ってるよ。
なんとか警察をまいて、逃げ込んだのは小さな公園。小さな遊具の中に隠れる。このまま夜を過ごすのか…明日からどうしよう。俺…消えるしかないのかな…？
「こんばんは…モンスターさん？」
ガラスのような透明な声。妖艶なその空気感は、俺の好きな美梨ちゃんそのものだ。美梨ちゃんは遊具の影に身をしのばせた。
「私、美梨。アンタは？」
及川徹。…答えたいけど、声が出ない。
「言ってること分かんのかな？」
YESの意を込めて、盛大に頷く。
「へえ、分かるんだ。名前は？書けるなら書いてみて？」
…その手があったか！
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作者名：ΨΨ | 作成日時：2018年6月8日 23時
