第838話 ページ22
石井side
すごい、すごい
俺のあこがれだった人が目の前にいて
俺とタメで喋っている
こんなの、想像できただろうか
いや、できひんやろう
なんかもう、死んでもええわ
石井｢あの…………俺のこと、知ってた？｣
｢ん？知ってた。M-1で見たから｣
石井｢嬉しい……Aくんも、そういうの見るんや｣
｢うん、まあ…………しっ！！｣
突如、俺の口はAくんの手で塞がれた
びっくりして喋ろうとするが、口を指に当ててるポーズをするAくん
落ち着いてくると、微かだが足音が聞こえた
巡回するのではなく、誰かを追っているようなリズム
もう一度口に指を当て、顔を近づけてくるAくん
あれ、この状況ってかなりアレな気が……
狭い試着室、ほぼ密着した体、近い顔………………
石井｢！！！！｣
思わず声を出してしまいそうになったが、それを察したAくんの手が強まる
さらに顔を近づけ、目で訴えてくる
どんどん、足音は近づいてきた
刹那
誰かの悲鳴が響いた
去っていく足音
静まり返ったフロア
｢はぁ…………｣
石井｢ふぅ………………。あれ多分、よしこやな｣
｢うん。それより、手、強かったよね？大丈夫？｣
そう言って頬に触れ、俺の顔を覗き込んでくる
天然でこれなん？
だとしたら、天性の人たらしや……
石井｢う、うん。大丈夫｣
｢じゃあ、俺はもう行くね。石井さんも、気をつけて｣
そう言って颯爽と駆け出していくAくん
もし俺が女なら絶対惚れてたわ……
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作者名：水音 | 作成日時：2019年11月30日 14時
