第993話 ページ27
Aside
自分でもわかるぐらいに笑顔が引きつっている
役者を始めて以来、最低の演技だろう
「…………その………………手に、持ってる……の、何…………？」
にぃの手に握られているのは、アルミか鉄のような
鎖状のもの
予想したく無いけど、してしまう
大志「手枷だよ」
全身の毛穴から汗が吹き出していくような感覚
恐怖？
いや、それとはちがう
なんなの、この形容し難い感情は
大志「ははっ笑。瞳孔開いてるよ？…………もちろん、俺だってできれば使いたくないんだ。Aの肌に傷をつけるなんて嫌だし、Aの嫌がることはしたく無いし。…………でも、これを使えば確実にAはここから出れないよね」
今目の前で喋っているのは誰？
にぃの姿をした別の人？
それとも、これが本当のにぃなの？
大志「…………この意味わかるよね？」
「………………」
無理に暴れようとするなってことだよね、きっと…………
にぃがこんなことするとは思えない
でも、俺の目の前にいるのはにぃで
変らない事実で
なんで？
俺とにぃは、兄弟より、親友よりずっと仲が良かったんじゃないの？
にぃの感情は別のものだったの？
大志「そうだ！ローストビーフ食べる？A、俺が作ったの美味しいっていつも言ってくれるよね。それに、さすがに2日も何も食べないと体壊しちゃうし」
「……え？」
2日？
2日って……
「…………今日は5月の14日……だよね？」
大志「え？…………ああ、A、丸2日寝てたもんね。今日は、5月の15日だよ」
うそ…………
そんなに寝てたの？
じゃあ、恋ちゃんは？
気づかないはずないよね？
大志「もちろん、AのスマホのGPSは解除したよ。場所がバレたら元も子もないからね」
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作者名：水音 | 作成日時：2020年8月7日 8時
