第1745話 ページ32
賢志郎side
病院は走ったらあかん
でも、早歩きならええよな？
Aに早く完成した家を見せたくて、勝手に早足になってまう
荷解きで寝不足やけど、気にならない
Aに会えるなら、飛んでいける
病室の前に着き、ドアをノックしながら開ける
賢志郎「まだダンボールとかあって色々ぐちゃぐちゃなんやけどな、写真撮ってきた…………え？」
目の前にいるAを見て固まってしまう
あれ？俺、Aと付き合うて、それで結婚した……やんな？
今、ベッドに座っているAは、あの時の……俺が心底惚れた時の、想いを伝えられず悩みに悩んでいた時の
ショートカットのよく似合う、一見して少年のように見えるAや
「驚きすぎでしょ」
そう言って少し呆れたように笑う
その顔には化粧が施されていない。そう、それすら昔のAのようや
この頃のAはきっと、俺に興味なんかなくて。でもそれすら良くって
男の子にも女の子にも見える、唯一無二のAの空気感があって
賢志郎「久しぶりやね……」
「いや、過去の私がやってきたとかじゃないんだから。あの頃の私が成長して、で、もう一回髪を切っただけだよ」
賢志郎「いやいや、だって………え、だって……………」
どうも視覚からの情報がエラーを起こしてしまっている
目の前におるのは、昔のAやなくて……今の、俺の奥さんのAなんやから
その証拠に、お腹はほら、大きい………
そう認識した途端に身体中に電流が走ったような感覚になる
そうか。俺が憧れ、恋焦がれてきた“あの”Aが俺の奥さんになって、そして俺との子供を身籠もっているんや
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作者名：水音 | 作成日時：2024年1月19日 21時
