第1739話 ページ26
賢志郎side
Aが入院して一週間
医師によれば何も問題はなく、順調らしい……が
どうにもAの顔が曇って見える
顔色が悪い、とはまた違う。顔色は悪くない
ただ、物憂げな顔をしとる
賢志郎「なんかあったん？」
「……え、分かっちゃう？」
賢志郎「そら旦那やからな。それぐらいすぐ分かるで。……なんか不安なことでもあるん？」
「うん、まぁ……」
手に持っていた文庫本を置き、目をふせるA
悲しみと同じぐらい苦々しさを湛えた顔をしている
「一人でいて、やることもないと、ふと考えちゃうんだよね。……私は、いい親になれるのかなぁって」
育児情報誌のとあるページを開くA
“虐待と躾の決定的な違い”、か
「私は幼少期の親の記憶はあるよ。表面上は普通に、育てられたと思う。……でもそれは、親の愛情とか無かった。裏では全く違うことを考えていただろうしね。いわば、出荷するために丹精込めて飼育してる、みたいな……」
そう言うと肩にかけている毛布をギュッと握る
「子供を育てるときにさ、自分が育てられたように育てる人もいれば、反面教師にする人もいるじゃん。私の場合は……どこまでが本当で、どこからが嘘なのかわからないんだよ。それに、悪いお手本、って言葉が生ぬるすぎる。やっちゃいけないことだから。だから……」
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作者名：水音 | 作成日時：2024年1月19日 21時
